仲良くなりたい｜リアクション

仲良くなりたい

☆浅井幸太

「おはようございまーす、部室の鍵当番で来ましたー」
　元気よく、陸上部の顧問である浅井幸太先生を訪ねた宇佐見望月だったが。
「宇佐見、ちょっと話がある」
　いつもの笑顔ではなく、眉間にしわを寄せた浅井の顔に焦る羽目になった。
「……って、こーちゃんセンセ説教っすか？　俺、何か悪い事しましたかっ！」
「悪いのは、成績だ」
「……あ」
　望月の頭に、悲惨な状況の成績がフラッシュバックした。
「少しでいいから、部活に向けるエネルギーを勉強にも生かせ」
「えっとー……ハイ。追試は無事切り抜けました……授業はもう寝ません」
　自信はないが、精一杯殊勝に、がんばりますアピールをする。
　一瞬の後、浅井先生は笑顔になって望月の肩を叩いた。
「よし、頑張れよ。陸上での頑張りがあれば、お前ならできる！」

　１年１０組の前で、青物といきは浅井先生を待っていた。
　いつものように元気に、浅井先生は声をかける。
「おはよう！」
「浅井センセーおはよーございます！　今日はねー、といき１万kmのタイムはかってもらいたいなー」
　といきは浅井先生が担任をする１０組の生徒であり、陸上部員だった。
　男子校出身の浅井先生はすぐ赤くなってしまって女性が苦手だ。
　最初はそんな様子をからかっていた　といきだけれど、先生の優しさに惹かれ意識するようになって。
　気がついたら、尊敬だけではなくなっていた。
「おおそうか！　よし、楽しみにしてるぞ！」
　女子でも、接する機会が多い陸上部員には比較的慣れてきた浅井先生は、元気に、爽やかに笑う。
「放課後部活でよろしくだにゃん☆」
　この語尾は可愛さのアピールではない。恋愛感情を先生には隠そうと、といきは猫キャラで自分をごまかしているのだった。

　ホームルームを終え、浅井先生が校庭へ移動しようと教室を出た時。
「浅井せんせー！！！！！！！！」
「ぐふぅっ！」
　廊下で待ち構えていた桃原空音のタックルが決まった。
「桃腹……お前、毎日毎日、飽きもせず……」
　浅井先生の顔が引きつる。
　女性が苦手というのは、こういう意味ではなかったはずなのだが。
「激萌えきゅんきゅん丸☆これがあたしの楽しみなんだもーん！」
　空音はうっとりとにやけた顔でよだれを拭く。

　月曜は浅井せんせーにタックル。
　火曜は浅井せんせーの胸筋観察。
　水曜は浅井せんせーの雄っぱいモミモミ（妄想）
　木曜は浅井せんせーをぺろぺろ。
　金曜は浅井せんせーのおパンツクンカクンカピーーーー（妄想）
　それが空音の一週間だ。
　黒髪短髪で筋肉質で童顔で可愛くって……浅井先生は薄い本作れちゃう萌えの理想系。
　浅井先生を追っかけて、陸上部のマネージャーになったほどである。

　浅井の受難は、まだまだ続きそうだった。
　

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