そっくりさんが来た｜リアクション

そっくりさんが来た

　シーサイドタウンを、潮風が吹きわたっていった。
　鴎の鳴き交わす声が響く。銀杏が散らされ、街路を黄金に染めた。
　森嶋茉莉花の憂鬱は晴れない。
　１７歳という歳に似合わない、愁いを帯びた表情。大人びた風貌と相まって、その姿は周りをはっとさせる。
　同級生たちはまだ幼い。かといって、無理に背伸びするのも性に合わない。
　宙ぶらりんで、日々をもてあまし気味だ。
　初めて茉莉花は寝子島を訪れたのだが、その島の噂は耳にしていた。
「あなたに、とてもよく似た人がいるわよ」

（どこまで、そっくりなんだろう）
　年齢、見た目。性格、服、音楽の趣味。そんなものまで一緒なのだろうか。
　なんとなく続く、この出口のない憂鬱も一緒なのだろうか。

　さわりと、風が銀杏を揺らす。
　黄金の嵐のような、さんざめく銀杏の葉の嵐の中、仙藤紫は佇っていた。