そっくりさんが来た｜リアクション

そっくりさんが来た

『アイドルを探せ！』

　シーサイドタウン駅前に設置された特設会場。
　その上で恐縮しきりなのは、夢宮瑠奈のそっくりさん、里見ゆい。
「今日は、末明せれねちゃんに来てもらいました！」
　わーっ！　沸き返る観衆。

（どうしてこうなった……）

　ゆいは恐縮しきりである。
　本の虫で、テレビなど見ない彼女。
　それでもたまに『せれねちゃんに似てる』といわれることがあった。

「せれねちゃん、今日はシックな服装だね」司会の男がなれなれしく話しかけてくる。「普段着？」
「……はい……」
「何か雰囲気が違うね。別の人みたいだ」

（別の人だ！）心中で絶叫するゆい。
　本人が来るまで、ここでさらし者なのだろうか？
　若干男っぽい口調で、わかってもらえないだろうか……。

「それじゃ、さっそく歌ってもらおうか」
「私は、歌……えない……」

　ざわわっ。
　観客に動揺が走る。

「それじゃ、ダンスを軽く……」
「お、踊るのも、無理です……」

　観客に衝撃が走る。
　歌とダンス大好きなせれねちゃんが、歌もダンスも無理なんて……？

「【悲報】せれねちゃん、引退」

　そんなニュースサイトの文字が、不吉に頭をよぎる。
　いったい、どういう事……。

「はーい！　ゴメン！　みんなお待たせっ！」
　その時、ステージ脇から、少女が走り出てきた。
「今日は、私の素敵なお友達に、来てもらいました！」
　ペパーミントグリーンの衣装に身を包んで、観客の歓声にこたえるのは、末明せれねこと、夢宮瑠奈。

　先ほどの不安から一転して、歓喜に雄たけびを上げる観客。
　それに答えながら、瑠奈はゆいに「ありがとう」とつぶやく。
　瑠奈に手渡された紙を見て、司会が絶叫する。

「今日は特別な夜！　そっくりさんと一緒に『そっくりさんショー』！」