そっくりさんが来た｜リアクション

そっくりさんが来た

「へー！　マナちゃんて言うんだ。私、羽生碧南！」

　カフェのテラスで、二人の少女が話し込む。
　笑顔を返すのは、三橋真菜。元気印の笑顔が二つ向かい合わせになった。
　ケーキバイキング。お互い皿を山盛りにして、豪快にぱくつきながら話をする。

「碧南って書いて、ミナっていうのよ」
　自己紹介。部活の話。背が高いせいで、服が限定され、男子にも敬遠されがちと言った、身長高い系女子の悩み。

　そんな普通の会話と一緒に、二人の会話はＢＬゲーの方向に流れていく。

　ニャンジェリーク『REPLICA SONG』などの定番どころはもちろんのこと、マニアックなＢＬゲーにも、二人はよく通暁している。

　納豆を擬人化した『納豆乱舞』。ラーメンを擬人化した『ラーメン乱舞』。牛を擬人化した『牛乱舞』。独裁軍事政権を擬人化した『独裁軍事政権乱舞』。メイドを擬人化した『メイド乱舞』。妹を擬人化した『妹乱舞』。擬人化を擬人化した『擬人化乱舞』。
　あらゆる二番煎じのダメゲーを、繊細かつ先鋭的な愛情をもって語る二人。
　真菜の本領は、ＢＬコミック。だが、乙女ゲーのキャラカップリング妄想も、当然行う。嗜みというやつである。
　ぐいんぐいん。
　かわいらしいカフェの一角で、そこだけ黒い渦の巻き起こるような、濃い会話が交わされている。
　そちらを見ようとして、慌てて目を伏せる周囲の人々。
　若干乙女として、それはどうかという話題にまで、二人は笑顔で入り込む。

（コレが、日本のジョシコーセーですカ！）
　善良なマイク・ジョーンズ氏は、この光景をみて驚く。
　ゲーム先進国の日本では、これくらいの濃厚な会話が、カフェで交わされているのだ！
　さすが、ニャンテンドーのおひざ元である。日本文化を解したと思っていたマイク、己の不明を恥じる。

　碧南と真菜のＢＬトークは尽きることなく、閉店まで続いた。