【ハロウィン】寝子島ハロウィン☆デイズ！｜リアクション

【ハロウィン】寝子島ハロウィン☆デイズ！

　陽が落ちて久しい。
　すでに夜、秋の夜。長い夜。
　月影さやけきこの頃ではあれど、今夜に限っては、静かな夜はありえない。
　幽明の境界が消え去るハロウィンは、いよいよその最高潮に達しようとしていた。
　ここは海上施設、星ヶ丘のイソラ・ガレッジャンテだ。
　さざ波を聞き潮の匂いをうっすらと嗅ぎながら、集う会は舞踏会、ひととき浮き世を忘れ姿も変えて、踊り明かす仮面の祝祭よ。
　夜のとばりは、参加者たちに変化を起こしている。
　橙色の灯がともり、すべての者をあかく照らし出していた。幻灯によって男も女もつややかになり、影の部分は増し、闇もひそかにその存在を高める。昼間見ると滑稽な仮装すら、怪しく妖しい幻想世界の住人のように見えるのであった。

　イソラ・ガレッジャンテの控室。
　全身鏡をもう一度真正面から見て、八咫鏡はつぶやいた。
「うん私今日はかっこいい。さすがに女には見えないでしょう」

　きりっと頬を引き締め、自分が思う精悍な表情を作る。
　本日の鏡は臨時のスタッフだ。このイソラ・ガレッジャンテの給仕服を借用し、シックに決めている。
　こうした感覚は久しぶりである。なぜなら普段鏡は、星ヶ丘寮では仕事中メイド服を着ていたりするため、なにかというと女、それも少女扱いされてしまいがちなのだ。仕方がないところはあるとはいえ、内心、忸怩たるものがあるのは否めない。
　ゆえに今日は、本来の職分に戻ったような気がする鏡なのだった。なんとなく宝の持ち腐れ感があったバトラーの資格も、今夜は大いに役立つことだろう。
　それでは、おもてなしの場に赴くとしよう。