秘密のろっこんコロシアム｜リアクション

秘密のろっこんコロシアム

　昼休み終了の予鈴が、少し遠くに聞こえる。
「はぁい皆、そろそろおしまいの時間よ！」
　尾鎌蛇那伊がその場の一同に終了を呼び掛ける。そして八神修も解散を促していた。
「次が移動教室の者は、遅れないように気を付けるんだぞ！」
　彼等の号令に気付いて戦場を離れる者もいたが、白熱している者達にはそれが届いていないようだった。
「もうっ、しょうがないわねぇ……」
　見兼ねた蛇那伊の巨体が、戦場に向かう。そして周りの音が聞こえていないらしい生徒達の間に割り込んだ。
「ほーら、そこまで」
「邪魔しないでくれ、これは譲れない戦いなんッ……」
　残った生徒の抗議は、蛇那伊の手が肩に乗せられた途端に掻き消えた。
「終わりよ」
　生徒がその時に見たと感じたもの。それは、蛇那伊が今残っている生徒全員を皆殺しにする光景――
　蛇那伊が放出する殺気に触れた全ての者の脳裏に、同じイメージが浮かぶ。人間として、否、動物としての本能的な恐怖が、警報を鳴らしている。
　助けを求めて視線を彷徨わせた先には、修の姿が。
「俺に手を出させないでくれよ……？」
　これ以上足掻くようなら、いつでも『分解』が可能だ――
　そう言わんばかりの鋭い視線。
「……ハイ」
　二人の強烈なオーラにより完全に戦意が鎮まったところで、蛇那伊は殺気による拘束を解き、パンパンと手を叩いた。
「さっ、皆お疲れ様！　教室に戻りましょ！」

　次の授業が始まる前の残り僅かな時間、ろっこんコロシアムの秘密を共有した仲間達の間には、平和なやりとりもあった。

　冴木竜司は、対戦した相手と固い握手を交わしていた。
「いや、いいバトルだったぜ！　お疲れ様！　放課後にラーメンでも食べに行かないか？」
　ラーメンと聞けば彼女、畑中華菜子がぴょこんと出てくる。
「ラーメンならぜひ、猫島軒をご利用くださいアル！　従業員一同お待ちしておりますアルー！」

　北原みゆきと旅鴉月詠は、教室に戻る準備をする。
「お疲れ」
「うん、お疲れ様。そういえば詠ちゃん、最初は絵を描いてたよね」
「あぁ。これだよ」
　月詠はスケッチブックを開き、みゆきに見せる。そのほとんどは今回の参加者を描いた躍動感あるラフスケッチだ。ふと、その中にあった一枚を見て、みゆきの頬が紅潮する。
「あっ……これ、私……？」
　真剣な表情で、真っ直ぐ前を見て戦っている少女の姿。自分で自分を見る時とは少し違う、別の角度から見られた自分。
「記念に寄贈しよう。もらってくれるかな」
　切り離されたそのページを、みゆきは頷いて受け取った。

　そして絹織真由良には、恐れていた事が起こっていた。
「いっ……てて……！」
　ろっこんの反動による全身筋肉痛である。
「あらあら大変。お大事にしないとね」
　それを見た尾鎌蛇那伊は、有無も言わさず真由良をひょいと担ぎ上げて保健室まで運んでいくことにした。

　八神修は解散する皆を見送った後、自分も支度をしつつ今日撮影したビデオを試しに再生してみた。
「ろっこんの鮮明な撮影はできなかったが、頭の中の記憶と照らし合わせれば、十分考察の材料にはなるだろう……って」
　だがそこに映ったのは、曇り一つ無いブルースクリーン。
「……やがみんごめん。多分それ……うちのろっこんでデータ吹っ飛んだわ」
　同じく撮影を試みていた壬生由貴奈が、画面真っ黒のスマホを片手に、乾いた笑みで申告してきた。

　今日の戦いの一部始終は、写真や映像には残されなかったが。
　参加者達が得た経験は、きっとこれからの戦いの役に立つことだろう。
　秋の晴天の下、寝子高生の間で行われた秘密のろっこんコロシアムは、ここに閉幕したのだった。

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あとがき

担当マスター：イルミネート
ファンレターはマスターページから！

学年も性別も関係なく入り乱れるコロシアム、お疲れ様でした。

参加者様はろっこん使いまたは戦闘員として、ビギナーの方からベテランの方までいらっしゃるので、
今回の執筆はパワーバランスの調整が関門になるだろうと覚悟していたのですが……
特に熟練者の方々が、あらかじめバランスを考慮したアクションを出してくださいまして
スムーズにマスタリングを行うことができました。

作中、一部のろっこん判定はレベルや能力値等も参考にさせていただきました。
しかしろっこんは状況に応じて刻々と変化する不思議な力。
今回の威力や効果の判定は、サンプルの一つとしてお納めいただければ幸いです。

それでは、皆様の今後のご活躍も応援しております！

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シナリオ

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