中学生も中間テストざますざます！｜リアクション

中学生も中間テストざますざます！

○テスト初日

「日本の学校で、テスト、始めてのです。がんばります。うう、でも、日本語難しいのですよね……」
　秋からやってきた転入生、１年のフィリップ・ヨソナラは一時間目の国語のテストを前に緊張していました。
　銀髪に青い目のフィリップは両親共に様々な民族の混血で、16分の5は日本人です。
（勉強は、しっかりしているつもり、ですけどちゃんと僕、できるでしょうか。まずはしっかり名前書きましょう）
『四十八願フィリップ』
　アルファベットなら簡単ですが、頑張って漢字で書きます。
（うう、書く数（画数）が多い字は、大きくなってしまうです……。かっこわるいですね）
　名前を書くのも一苦労です。
　（むむ。問題も難しい。国語は苦手です……ええと、漢字、みぎひだり、どっちでしたっけ）
　練習して覚えたつもりでも、ついへんとつくりが逆になってしまいます。
（どうして日本の人は間違えないんでしょう？）
　フィリップは不思議でなりません。
（長い文も、読むのが時間かかります……頭の中で、いろんな言葉、ぐるぐるしてきます）
　読み飛ばさないように文字を指で追いながら、頭はフル回転しています。
（この単語は、フランス語でのあの言葉と同じ意味？）
　

　２時間目。数学のテスト中に、２年の高瀬練はぼーっと考え込んでいました。
（今日のテスト終わったら何しようかなー。テスト期間中っていつもより早く帰れるもんねー。早くテスト終わらないかなー）
　ベリーショートの髪は男の子のよう。超フリーダムでマイペースな練です。
（折角早く帰れるんだから帰りに釣具屋さんに寄ってルアーみたいなー。皆にはあんまり分かってもらえないけど、ルアーってキラキラしてて綺麗なんだもん。ワームは……うん、確かにあんまりかわいいとは思わないけど……）
　母親を幼い頃に病気で失った練は、それ以降漁師の父親と二人暮らしでした。
　子どものときから父親に連れられて行った海で、釣り人の様子をよく見ていました。
　趣味はルアー集め。
　ルアーと一口に言っても、いろんなタイプのものがありますが、練が好きなのは金属やプラスチックでできたキラキラしてて綺麗なものです。
　金属光沢や青魚の光沢が好きで、そのせいか青魚であるサンマさんも好きです。
（あ、でも今晩の晩御飯の材料の買い出しとかもしないとなー。洗濯物も入れなきゃいけないし……掃除もしておきたいなー特に水垢が付き始めてるお風呂……）
　女らしくはありませんが、母親がいないので家事は練の仕事。学校と両立するのはなかなか大変です。
（後は……って、もうテストの残り時間あと半分もない！？）
　我に返り、練はテスト用紙を見直します。
（あ、半分くらいしか解いてない！　流石にまずい！　問題解かなきゃ！）
（え、えーっと……りんごとみかんを買う……？　……りんごかー、りんごはまだ旬の時期じゃないよねー、冬のものだし）
　いつのまにかまた練の思考は脱線を始めます。
（りんごとみかんの問題よりは、さつまいもと栗の方が旬……さらにいうなら秋刀魚とサンマさんの方があたしは楽しい……）
　もうテストとまったく関係がなくなっています。
（ってそうじゃない！！　問題解かなきゃ！）
　また我に返ってテスト用紙を埋め始めますが。
（あ、でも今晩の晩御飯さつまいもご飯もいいかも……帰りに買って帰ろうかなーあーでも栗ごはんでも……）
　こんなにマイペースでも、不思議なことに成績はそこそこ良いのでした。
　