【中間テスト】そんなこんなの最終日｜リアクション

【中間テスト】そんなこんなの最終日

　橘勇は生物の復習に余念がない。教科書を通読してノートの要点を早口で呟く。
「復習は十分だ」
　全ての教材を閉じる。数分の猶予が残されていることを知ると再び勉強に戻っていった。
　ほぼ時間がなくなった。勇は机に両肘を乗せた。両手を組み合わせ、その上に顎を乗せる。祈るような姿で胸中に思いが溢れる。
　範囲の見直しは十分にした。教師の出題傾向を分析して、関連する要素も頭の中に詰め込んだ。
　授業中に取った内容も万全だ。ノート単体の見直しも終えている。
　勇は目を伏せて緩やかに息を吐いた。
　それでも問題は残されている。出題者である先生の気紛れで傾向にないことをした場合、俺は対処できるのだろうか。安心してバイトに励む為にも赤点は許されない。補習でバイトの日が潰されれば、それこそ生きるか死ぬかの死活問題に発展する。
　俺に赤点は絶対に許されない。
「先生、頼みます……俺の生活の為にも、傾向通りの問題で……」
　敬虔な信者となって勇は祈りを捧げた。

　運命を分かつ、テストが始まった。
　勇は真剣な目で設問を熟読する。即答できない問題は飛ばした。手は動き続けて最後に行き着いた。
「一回目にしては良い方か」
　虫食い状態の空欄に勇は挑む。じっくりと時間を掛けて答えを導き出した。
「次は見直しだ」
　上から順に見ていく。滑らかな目の動きに違和感が挟まる。
「……ここの答えは怪しいな」
　設問を黙読して自身の書いた答えに注意を向ける。二つの間を目が行き来して深い思考に陥った。
　苛立つ気持ちが眉尻を上げる。勇は消しゴムを使って答えを消した。頭の中まで白紙になったかのようにさっぱりとした表情に変わった。
「そうか」
　思い付いた答えを書き入れた。全ての欄が埋まり、二回目の見直しに突入した。
「……これくらいか」
　力を出し切った様子で勇は呟いた。