声のない世界で｜リアクション

声のない世界で

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凛は軽音楽部の部長である。
そして今日は、軽音楽部の活動の日だ。
もちろん、部活動には行く。
そして部長らしく、
――今日もみんな張り切って行こう！
と言いたいところなんだけど……相変わらず、声が出ない。
いつものような元気の良い声が飛んでこないことに、部員の皆も不思議がっている。
とりあえず、皆に身振りと手振りで声が出ないことをアピール。
「え、それ部長大丈夫なの？」
とか、あたりまえだけど心配された。
ちょっと考えて、愛用のギターを軽く鳴らしてみた。
……うん、ちゃんと音は鳴る。
ってことで、演奏やセッションには問題ないよと頷いてみせた。
ただそれでも、やっぱりおしゃべりはしたい！
だけど声は出ない！　
もどかしさに頭を抱えているうちに、不意に頭の上で豆電球が灯った。
（そうだ、私にはこれがあるじゃない！）
ギターを構えて――音でアピール！
言葉を紡ぐように弦を弾き、奏でる音でみんなの会話を彩ってみることにした。
明るい雰囲気は、「さっきの演奏すごく良かったよ！」って気持ちをこめて。
熱く昂ぶるような演奏は、「この調子で頑張って！」っていう鼓舞と一緒に！
そうしていると、段々と皆もそれにノッてくる。
幾つもの演奏で、会話がぐっと賑やかに彩られていく。
ちょっと大変ではあるけれど、なんだか新しい表現の幅が広がりそうな感じ。
想いや気持ちを楽器によって全力で表現した曲、というのもいいかもしれない。
ものは試しとばかりに、さっきまで奏でたメロディを繋ぐ。
――よし、
『これで一度合わせてみようよ！』
紙にでっかく書いて見せたのを合図に、即興の合わせを始める。

時に明るく、時に熱く高ぶるような。
あるいは少し静かに、あるいは研ぎ澄ますように――。

演奏が、終わる。
余韻が完全に空気に溶けたのと同時に、凛は昂ぶりのあまりギターを構えたまま飛び跳ねた。
新しい収穫になったし、これはこれでいい経験だったかも！
そう思わずには、いられなかった。