餃子の闘将｜リアクション

餃子の闘将

　即席で設えられた会場に、参加者たちが集う。
　開始の瞬間を待ちわび、熱気が渦を巻く。
　スピーカの乾いた放電の音が鳴った。

　――フライングギョーザキャッチ、開始！
　
　パーン！
　号砲とともにまき散らされる、餃子。
　跳躍して咥えようとする参加者。

　その中でも、やはり志田朝陽の執念はすごい。
　ギョーザのファンタジスタである。
　質などは一切気にしない。ひたすらに量を求める。

　一際迅速な、黒い影。
　骨削瓢。

（銭のない猫鳴館の、欠食童子の胃袋を、なめちゃいけないよぃ……）

　ここまで絶食の続いた数日。
　あえて他の餃子は口にしない（お金とられるかもしれないから）。
　極限まで高められた空腹エネルギーが、瓢の運動能力を極限にまで高める。餃子本能、餃子反応。
　
　しばらくこの先、食事にありつけないかもしれない。
　猫鳴館に生きるものは過酷だ。

　他人の頭を踏み台にし、片端から餃子を食らう。
　まさに颶風。
　しかも一定の値段のものだけ。
　
　露草の小ぶりな餃子。
　満月の海鮮餃子。
　修の、世界の餃子。
　各所の提供した餃子が、宙に舞う。
　綾花作成の、赤、緑の餃子が、美しく宙を舞う。

「ぐわあッ！」
　参加者の中から悲鳴が上がる。
　それを見て笑う瓢。
「他の方の作られたものも登場するようなんで、あっしも一つ」
　懐から取り出すのは、激辛餃子、熱々スープ入り餃子。