かってに応援ちゃんねる！｜リアクション

かってに応援ちゃんねる！

「え、インタビュー？」旧市街をぶらついていて、黒子に呼び止められたのは桃川圭花。
「そう、生徒会選挙について」ゴールドが候補者名を書いたフリップを取り出す。

　その顔をじーっと見つめる圭花。
「……あ、あなた見たことある！」
「まーな。新進気鋭のマルチタレントってとこだな」年頃の女の子に顔を知られていたとあって、ちょっぴり誇らしげなゴールド。
「テレビとかにちょろっと出てない？　えーっと、あれ、あれでしょ」
「ちょろっとって……」
「ワールド」得たりとばかりに頷く圭花。「ワールド千駄ヶ谷」

「ゴールドだ！　サッカーの実況とかもしてるんだけど……」
　球技に興味のない圭花、ゴールドの抗議を躱してフリップを見る。「で、選挙」

　候補者一覧を見る圭花。
　顔の広い彼女。結構知った顔もある。

「誰か、知ってる人は」
「あ、宇宙！」ゴールドの言葉をさえぎって、妙な単語を発する圭花。
「……宇宙？」
「いや、この子！　巫部紫苑さん！」フリップをびしっと指す圭花。「この子、ほんとすごいのよ」

　確かに彼女、会計の選挙演説でも異彩を放っていた。
　案外、同性の女の子にアピールできる何かをもっているのかもしれない。

「共感できるものが、あるとか？」
「大きなイベントとかあると、屋台出るじゃない？」
「まあね……」
「それを全部ね、端から端まで、ぜーんぶ浚っていくの！」

「……」
「あれはねー……」しみじみつぶやく圭花。「感動があるわよ、その場に居合わせると」
「……」
「宇宙よね、宇宙。もう、ワールドとかちっぽけなのよ。もう、コスモ」
「さらっと俺をディスるの、やめてくれないかな」
「人類の可能性、っていうかね」ひとしきり頷く圭花。

　無言の時間が過ぎる。
　一応プロのタレントに、突っ込む気力を沮喪させる彼女。
「……え？　食べっぷりはいいの？」
　力ないうなずきに答え、圭花はこほんと咳払いする。

「もちろん巫部さん、候補者としても、見どころあると思うの」
「そういう話が聞きたかった！」息を吹き返すゴールド。
　見れば頭の切れる才女である。有益な話が聞けるかもしれない。
「落ち着いてる。っていうか、あれって特技レベルよね、もう」
「まあ、あの選挙演説はすごかったな」
「そういう安定感……いや、本人はすごくスリムなんだけど、体型は」圭花は話をまとめる。「こんなにぎやかな学校だからこそ、落ち着いた人が必要なんじゃない？」
　なんだかんだでまとめてしまうあたり、彼女の機転である。
　
　身近に自分達の希望を聞き入れて、有事に動じないでいてくれる。
　確かに、彼女が応援する根拠のある人物のよう思えた。

　というわけで、最後に候補者のみんなに向けて、カメラに一言。
　巫部さん、当選した候補者のみなさんと圭花は前置きして、

「当選したら、学食のデザートメニュー増やしてください！」

「……」
「『ｒａｔｏｎ』のプリンは購買で買えるけど、他にも『Ｄｅｐａｔｕｒｅ』のドーナツとか、『Ｈｕｉｔ　Ｆｅｉｌｅｓ』のパイとか……」
「……」
「あ、なんかすっごいわくわくしてきた」ニコニコしながら去っていく圭花。

　完全に振り回されたゴールド。黒子が肩を叩いた。