かってに応援ちゃんねる！｜リアクション

かってに応援ちゃんねる！

「とりあえず、質問に答える感じでいいのか？」髪をかきあげて、フィーナが尋ねる。
「お、おう」
「そうだな……候補者は、みんないいやつだと思うぜ」
「いいやつ？」
　少女は頷く。「候補者のやつらが見てるかどうかはさておき、ちゃんとした対応ってのはすべきだからな」

　その一言に、タイムキーパーが肩を震わせる。

　フィーナの「いいやつだ」という評は、きわめて重い。
　議会民主政治の発祥の国、イギリス。資質をもち、政策を誤らぬ政治家を選挙することは、貴族の必須科目だ。
　戦争によってではなく、議会によって王を放逐した、名誉ある革命。
　名だたる政治家を生み出し、弱腰だったある首相の名は、いまだに子供にまで軽侮の対象である。
　フィーナの断言は、無責任な放言の数百倍に相当する価値があった。

「パフォーマンスがちっと独特なのもいたけどまあ堅苦しさをなくすための演出だろうしな」
　タイムキーパーがビクッとする。
　演出ではなく、彼女はやりたいことをやったのだった。

「でもまぁ、正直言うとあんま砕けすぎなのもどうかって思っちまうところもあるからな」
　タイムキーパーがガクガク震え始める。

「固すぎず、かつ軟派すぎず……ってのがいいと思うぜ」
　タイムキーパーが全身から汗を滴らせる。

　自分はどうだったか？　うまくいったか？

「まあ、表面でおちゃらけていても、しっかり考えてるやつもいるからな……。
　一概に言えないだろうけどな」

（そう！　しっかり考えておりますわ！）

　フィーナは、誰かの魂の絶叫を聴いたような気がした。

　何気ない一言は、選挙演説を概括し、彼女なりの見解を示す。
　さらには、ある候補者の気概を奮い立たせてもいた。

「ちなみに、誰にいれるのか、決めてたりするの」
「うーん」フィーナは顎に手をやり考える。「まだ、決めかねてるってとこだぜ」

　とりあえず自分にダメ出しされなかったということで、タイムキーパーは存分に安堵する。

「ま、誰に入れても同じってわけじゃないからな。
　たかが一票だが、ちゃんと考えて決めたい！　てのはあるしよ」
　ゴールドと、そしてタイムキーパーがうなずく。

「……こんな感じでいいのか？」
「最高だ」拍手をしつつ、近寄るゴールド。
「インタビューとか初めてだからな、ちゃんと言えてるか……ちょっと不安だ」
　わりぃな、と会釈する彼女に、
「そんなことない。バッチリだよ」と太鼓判を押すゴールド。

　その背後で、大きくうなずくタイムキーパー。

（なんであのタイムキーパー、あんなに反応してたんだ？）

　首をひねりながら、フィーナは去って行った。

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