かってに応援ちゃんねる！｜リアクション

かってに応援ちゃんねる！

「あ、あのさ」
「はい？」呼び止められて、御剣刀は振り返る。「何の用ですか？」
「今、生徒会選挙の応援ってやってるんだけど、ちょっといいかな？」
「へえ、変わったことしますね」
　にやりと笑うゴールド。

「誰ですか？」
「ゴールド千駄ヶ谷。寝子高のＯＢだ」
「ネコネコ動画の関係者？」

　マイクを手渡され、無愛想な顔をカメラに向ける刀。

「俺は、寝子高一年の御剣刀です。
　選挙の応援なら、会長に推薦した人がいるので……」ゴールドと黒子に交互に顔を向ける。「その人のことでいいですか？」
「もちろん」

　慎重に言葉を選び、ゆっくり話し始める刀。

「その人は、二年の志波武道先輩です。

　俺がその人を推薦したのは、皆の声に耳を傾けてくれて、
　必要だったら、そのために骨を折ってくれる人だと思うから」

　決して流麗な弁舌ではない。けれど刀は、絞り出すように言葉を発していた。。

「誰かの『やろう』って言葉に、『やろう！』って言ってくれて動いてくれる人だと思う。

　一人じゃ無理でも、皆に『やろう！』って声を掛けて、みんなと一緒に突っ走ってくれそうだから。

　その勢いのまま、やってくれるって、期待できるから……推薦させてもらったんだ」

　言葉は違えど、刀の言葉は真央とよく似ている。
　熟慮という段取りは踏む者の、人間の正しさを信じ、世の中をよく変えていけると信じているのは、蓮と通じるものがあった。

「……俺は目標があって、それに打ち込むため立候補はしない。

　だけど」

　言葉がもつれる。

「だけど、俺に『やろう！』って声を掛けてくれれば！

　――『やろう！』って、一緒に突っ走れるよ！

　そういう気持ちで推薦したんだ」

　一座、寂蒔として声もない。
　勢いもなく、ひどく静かな彼の言葉が、広場にいるように殷々と響く。

「これを見ている寝子高の生徒は……」ここで初めて、すこし刀の声が高ぶる。「だれに入れるか迷ったら、この人に入れておけ！

　――きっと、何かを変えてくれるし、なしてくれるよ」

　

「……こんなもんっスか」冷静に返す刀。
「最高だ」刀に、ゴールドは親指を突き出した。「いいのが聞けた。うれしいよ」

　彼方から夕暮れが押し寄せてきた。
　間もなく残照が消え、夜が降りてくる。

　フィナーレの時間だ。

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