【生徒会選挙】歴代生徒会長からの挑戦状～寝子高バザール！｜リアクション

【生徒会選挙】歴代生徒会長からの挑戦状～寝子高バザール！

●こうして騒ぎは収まった

　選管のテントでは、選管で保健委員でもある猫島寝太郎と、駆け付けてくれた宇佐見望月や黒依アリーセによってけが人の治療が行われていた。幸いなことにいずれもかすり傷でろっこんで治療するまではなく、それについては望月もアリーセも顔を見合わせほっと息を吐く。
　寝太郎は、予め借りてきておいた救急箱の中から消毒薬や絆創膏を取り出し、アリーセと望月に渡す。
「消毒するわ、少し我慢してね」
「あたた……」
　不良を相手にしたときカッコよく啖呵を切っていた多喜勇生だったが、喧嘩自体は素人だったために乱闘の際にあちこちに擦り傷を作っていた。
「オレっちもあっちのおねえさんが良かったな～」
　と指を咥える淡々。
　寝太郎にバイク転倒の際の擦り傷を消毒してもらっている加怜もコクコクと頷く。
　望月が淡々のほっぺたの傷にびしりっと絆創膏を貼る。
「文句言える立場かよ」

　治療を終えた勇生、そして淡々と加怜は、迎えに来た血字礼と寝子高の仲間たちに囲まれて、バザーの人ごみの中に紛れていった。

◇

　維都月茉菜は、何事もなかったような顔で動物執事とメイドの猫喫茶『ｃｈａｔｏｎ』を訪れ、猫たちと戯れていた。
「ただ今戻りました……」
　ニンジャちゃん……ではなく、扮装を解いた常闇月も戻って来て、お気に入りの小猫を撫でる。
　鈴野加代も戻ってきた。
「すいません、お店を手伝おうと思っていたのについカッとなってしまいました……」
　狐耳を付けた執事服の八神修が出迎える。
「おかえり。気にするな。怪我がなくてよかったよ」
　加代の表情が緩んだ。
　ここは夢みたいに素敵な場所だ。可愛いメイドさんと執事さん。
　先ほどまで角のないヒツジの耳のカチューシャをつけメイド服で接客などしていた夢宮瑠奈が、ちょっと裏手に引っ込んだかと思うと、まるで羊さんみたいにもこもこの白いオーバーオール姿で現れた。
　瑠奈は、彼女らしい柔らかい声で、ほんわかのんびり歌いだす。

　　♪がんばって　がんばって
　　　だけどときには　のんびりで
　　　だいじょうぶ　だいじょうぶ
　　　ここでみんなで　ねむりましょう
　　　いまこのときは　ねむりましょう♪

（たいへんなこともあったかもしれない。辛いこともあるかもしれない。
　あたしには何もできない？　……ううん、あたしは夢見る羊。
　あたしは歌うの。
　皆に癒やしを分けられるように。
　皆が心ほぐれるように）

　瑠奈は謳う。優しい調べを。気持ちを込めて、ゆったりと。
　みんなちょっとピリピリしてた。
　だからこの時が、のんびりのんびりした時間になるように。
　みんなの気持ちが落ち着くように。
　そう願いを込めて。

「綺麗な歌声ですね」
　誰にともなく呟いて加代は思った。尖っていた気持ちが氷解してゆくようだ、と。
「そうですね……」
　月も歌に聞き惚れる。

　素敵な歌に、美味しいカフェラテ。
　仔猫たちもお姉さんたちが大好きで、スカートと戯れ、指を舐める。
「ふふ、可愛いね」
　茉菜はお土産に薔薇のアレンジを買った。茉菜の雰囲気に良く似合う、鮮やかな紅の色だった。