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【生徒会選挙】歴代生徒会長からの挑戦状～寝子高バザール！
●パパみたい、ママみたい
劉 瑞麗はご満悦だった。
右手は、叔叔のジニー・劉の骨ばった手と繋いでいる。
左手は、優しくて大好きなお姉さん、鹿嶋 洋美の柔らかい手と。
迷子になったら困るから、なんてジニーも洋美も言うけれど、理由なんてどうでもいい。
上海の裏社会の中で育ち、こんなに幼いというのに父に反発して家出して叔父を頼って寝子島に来なければならなかった瑞麗が、どれほど家族の愛に飢えていたかは想像に難くない。ジニーと洋美が与えてくれる何気ない手の温もりが、本当の家族みたいなこの瞬間が、瑞麗は嬉しくてたまらないのだ。
「私、母子家庭だったからこういうのに憧れてたんです」
洋美の眼差しはまるで陽だまりのように明るく優しい。
「まぁ本当は瑞麗ちゃんのポジションが夢だったんだけどね？」
三人ははじめ、瑞麗に引っ張られて、動物執事とメイドの猫喫茶『ｃｈａｔｏｎ』を覗いてみた。
瑞麗が手に取ったのは、カンフー服を着て蒸篭を抱えた10cmテディベア。
「この子が欲しい！ るいり大事にする」
ちゃんとお小遣いからお金を出して手に入れたテディベアを高い高いして満面の笑み。
「おまえいまからるいりのともだち。なまえ、好好に決めた！」
次に三人はメイドさんの案内でテーブルに着き、ジニーが頼んだカフェニャテを待った。運ばれてきたカップの中を覗き込み、そこに描かれたラテアートを見て瑞麗は目をまんまるくしてぱちぱち拍手。
「あいやー！ かわいい！ とっても上手！」
ジニーは早速、瑞麗の新しいともだち、好好の姿を頼んでくれたのだ。
「へえ、器用なもんだな。呑んじまうのが惜しい位だ」
「凄いねぇ。感激しちゃった」
ジニーと洋美は写真を撮った。ジニーが貰ったポストカードは瑞麗が譲り受けた。それからゆっくりと呑み干されてゆくカフェニャテを、瑞麗は本物の好好と一緒に名残惜しそうに見守った。
「次いこう！ 洋美はどこいく？ るいりも一緒いく」
「そうだねぇ、じゃあ……」
洋美は秋津屋で花と蝶の柄のとんぼ玉根付を買った。誕生日に片翅の蝶のペンダントを貰ってから、なにかと蝶のモチーフが気に入っているのだ、と洋美がいうと、送り主であるジニーは照れくさそうに頭を掻いた。
三人はまた手を繋いで歩き出す。
「洋美はお母さんみたい。いい匂いがする。そばにいると落ち着く」
「そう？」
「るいり、上海にいた頃、ぱーぱにどこかへ連れてってもらったことなんてなかった。だからぱーぱとまーまと遊びに行くのが夢だった」
「るいりちゃん可愛いから、まーまもきっと綺麗な人だったんだろうねぇ」
「るいりのまーまは死んだ。そうぱーぱが言ってた」
瑞麗の声がすこし沈む。
「でも本当はどこかで生きてる……かもしれない。ぱーぱが悪いことばっかりしてるから、るいりをおいてどこかへ行っちゃったのかも……」
洋美は言葉に詰まってジニーを見た。彼はまだ幼い姪っ子の生い立ちを想って不憫そうに肩を竦める。
「瑞麗は上海の実家じゃひとりぽっちで寂しい思いをしてたそうだ。だからせめて寝子島じゃ楽しい思い出を作ってやりてえんだ」
「劉さん」
「ん？」
「優しいんですね」
ああ。
ジニーはその微笑みに射すくめられる思いがした。
彼女の微笑みが、澱んだ埃だらけの心を洗う清らかな風のように思われて。
（俺も瑞麗もこいつに……洋美の優しさと朗らかさに救われてる。いつか……）
未来への想いがジニーを包み込んでゆく。
（そう、いつか……こいつと結婚して家庭を持つのかな。その前に告白しなきゃ始まんねーけどよ……仕事が軌道に乗ってきたら交際申し込もうと思ってたんだが……）
「……劉さん？ ちょっと顔赤いですけど風邪ですか？」
気付けば顔を覗きこまれていて、ジニーは思わず咽こんだ。考えが顔に出てしまっていたらしい。
「うるせえ、ほっとけ！ ……じゃなくて、その……付き合ってくれてあんがとな。姪っこも喜んでるし、」
俺も、という言葉を舌に乗せた瞬間、瑞麗がふたりの手を強く握ってにっこり笑った。
「洋美がるいりのまーま、叔叔がぱーぱならよかったのに……」
ジニーと洋美は顔を見合わせる。お互いに少し赤くなって。
「……お前さ、いい母親になりそうだよな。ガキの扱い上手いし、保育士とか向いてるんじゃね？」
「アハハ、保育士ですか、実はちょっと勉強してたりするんです、本当になるかはまだわかりませんけど、もっと頑張りたいなって、劉さんといてそう思ったんです」
それからそっと付け加える。
「劉さんが何に悩んでるかは分かりませんけど、私にできることがあったら言ってくださいね」
ジニーはそれに曖昧に笑う。
しなければいけない覚悟が、あるのかもしれない。
手に入れたいものがあるならば。
劉 瑞麗はご満悦だった。
右手は、叔叔のジニー・劉の骨ばった手と繋いでいる。
左手は、優しくて大好きなお姉さん、鹿嶋 洋美の柔らかい手と。
迷子になったら困るから、なんてジニーも洋美も言うけれど、理由なんてどうでもいい。
上海の裏社会の中で育ち、こんなに幼いというのに父に反発して家出して叔父を頼って寝子島に来なければならなかった瑞麗が、どれほど家族の愛に飢えていたかは想像に難くない。ジニーと洋美が与えてくれる何気ない手の温もりが、本当の家族みたいなこの瞬間が、瑞麗は嬉しくてたまらないのだ。
「私、母子家庭だったからこういうのに憧れてたんです」
洋美の眼差しはまるで陽だまりのように明るく優しい。
「まぁ本当は瑞麗ちゃんのポジションが夢だったんだけどね？」
三人ははじめ、瑞麗に引っ張られて、動物執事とメイドの猫喫茶『ｃｈａｔｏｎ』を覗いてみた。
瑞麗が手に取ったのは、カンフー服を着て蒸篭を抱えた10cmテディベア。
「この子が欲しい！ るいり大事にする」
ちゃんとお小遣いからお金を出して手に入れたテディベアを高い高いして満面の笑み。
「おまえいまからるいりのともだち。なまえ、好好に決めた！」
次に三人はメイドさんの案内でテーブルに着き、ジニーが頼んだカフェニャテを待った。運ばれてきたカップの中を覗き込み、そこに描かれたラテアートを見て瑞麗は目をまんまるくしてぱちぱち拍手。
「あいやー！ かわいい！ とっても上手！」
ジニーは早速、瑞麗の新しいともだち、好好の姿を頼んでくれたのだ。
「へえ、器用なもんだな。呑んじまうのが惜しい位だ」
「凄いねぇ。感激しちゃった」
ジニーと洋美は写真を撮った。ジニーが貰ったポストカードは瑞麗が譲り受けた。それからゆっくりと呑み干されてゆくカフェニャテを、瑞麗は本物の好好と一緒に名残惜しそうに見守った。
「次いこう！ 洋美はどこいく？ るいりも一緒いく」
「そうだねぇ、じゃあ……」
洋美は秋津屋で花と蝶の柄のとんぼ玉根付を買った。誕生日に片翅の蝶のペンダントを貰ってから、なにかと蝶のモチーフが気に入っているのだ、と洋美がいうと、送り主であるジニーは照れくさそうに頭を掻いた。
三人はまた手を繋いで歩き出す。
「洋美はお母さんみたい。いい匂いがする。そばにいると落ち着く」
「そう？」
「るいり、上海にいた頃、ぱーぱにどこかへ連れてってもらったことなんてなかった。だからぱーぱとまーまと遊びに行くのが夢だった」
「るいりちゃん可愛いから、まーまもきっと綺麗な人だったんだろうねぇ」
「るいりのまーまは死んだ。そうぱーぱが言ってた」
瑞麗の声がすこし沈む。
「でも本当はどこかで生きてる……かもしれない。ぱーぱが悪いことばっかりしてるから、るいりをおいてどこかへ行っちゃったのかも……」
洋美は言葉に詰まってジニーを見た。彼はまだ幼い姪っ子の生い立ちを想って不憫そうに肩を竦める。
「瑞麗は上海の実家じゃひとりぽっちで寂しい思いをしてたそうだ。だからせめて寝子島じゃ楽しい思い出を作ってやりてえんだ」
「劉さん」
「ん？」
「優しいんですね」
ああ。
ジニーはその微笑みに射すくめられる思いがした。
彼女の微笑みが、澱んだ埃だらけの心を洗う清らかな風のように思われて。
（俺も瑞麗もこいつに……洋美の優しさと朗らかさに救われてる。いつか……）
未来への想いがジニーを包み込んでゆく。
（そう、いつか……こいつと結婚して家庭を持つのかな。その前に告白しなきゃ始まんねーけどよ……仕事が軌道に乗ってきたら交際申し込もうと思ってたんだが……）
「……劉さん？ ちょっと顔赤いですけど風邪ですか？」
気付けば顔を覗きこまれていて、ジニーは思わず咽こんだ。考えが顔に出てしまっていたらしい。
「うるせえ、ほっとけ！ ……じゃなくて、その……付き合ってくれてあんがとな。姪っこも喜んでるし、」
俺も、という言葉を舌に乗せた瞬間、瑞麗がふたりの手を強く握ってにっこり笑った。
「洋美がるいりのまーま、叔叔がぱーぱならよかったのに……」
ジニーと洋美は顔を見合わせる。お互いに少し赤くなって。
「……お前さ、いい母親になりそうだよな。ガキの扱い上手いし、保育士とか向いてるんじゃね？」
「アハハ、保育士ですか、実はちょっと勉強してたりするんです、本当になるかはまだわかりませんけど、もっと頑張りたいなって、劉さんといてそう思ったんです」
それからそっと付け加える。
「劉さんが何に悩んでるかは分かりませんけど、私にできることがあったら言ってくださいね」
ジニーはそれに曖昧に笑う。
しなければいけない覚悟が、あるのかもしれない。
手に入れたいものがあるならば。
シナリオ
シナリオデータ
シナリオスケジュール
- シナリオガイド公開日
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- 2015年04月19日
- 参加申し込みの期限
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- 2015年04月26日 11時00分
- アクション投稿の期限
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- 2015年04月26日 11時00分
