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【生徒会選挙】歴代生徒会長からの挑戦状～寝子高バザール！
●志波陣営：シーウェーブ その３
和風のクロスが敷かれたテーブルに、品のよい和紙を敷いた漆塗りの盆が載っている。和紙の上には竹楊枝を添えた和菓子が三つ。まるで高級和菓子店から取り寄せた本物みたいだが、隣に置かれた和風のプライススタンドには『※食べられません』の文字。
呉井 陽太は手先が器用で、粘土細工や陶芸が得意である。盆の上の本物みたいな和菓子は、樹脂粘土で作ったもみじ饅頭、三色団子、おはぎの３種の和菓子マグネットなのだ。
「こんにちはー」
蕎麦屋すすきの看板娘、薄野 五月が陽太を見かけて顔を出した。
「どーも、いらっしゃーい」
「ほほう、これは……和菓子マグネットですかー。以前、うちににお食事に来て下さった時に、樹脂粘土で小物やアクセサリーを作っているとお伺いしてからぜひ一度、呉井さんの細工物を拝見したいなぁと思っとったんですー」
「それは嬉しいねぃ。どうぞどうぞ、じっくり見てよぅ」
五月はためすすがめつ和菓子を眺め、満足そうに笑った。
「このマグネット、とても美味しそうですねー、ふっふ。和菓子と一緒に並んどったら、本物と間違えて、食べてしまいそうになりますねー」
「食べたらだめだよぉ？」
「わかってます。でも和菓子と並べて驚かせてみたいとか、ほんのり悪戯心も働きます。ふっふ」
こちらをくださいな、と五月がマグネットを購入すると、陽太はそれを和紙の包みに入れてくれた。
「素敵な包みです。こんなところまで拘りがあるんですね」
「あるんだよぅ。お買い上げありがとーございまっす♪」
陽太が笑顔で手渡すと、五月はそうそう、と振り返った。
「演説、聞きました。頑張って下さいー」
「ありがとう。頑張るよぅ」
五月は手を振って、それから包みをもう一度そっと開けてみた。
「可愛い……すすきのでも、家でも、使うのが楽しみですね。ふっふ」
歩いていると、何やら物静かな雰囲気のカップルとすれ違う。どこか面差しが似ているから、兄妹だろうか。すると兄のお腹がぐぅ、と鳴り、妹が気遣わしげに声を掛ける。
「……何か食べる？」
「……いや」
「私があまり食べないから遠慮してる……？」
「……一緒に食事をするといつも俺ばかり食べて待たせてしまうからな……」
「……別にいいのに……」
「すすきのー、すすきのー」
五月はひとり言みたいに歌う。
妹の方は食が細いのかもしれない。そんな人にはお蕎麦もおすすめだ。
「さっぱり美味しいお蕎麦のすすきのー」
妹、須崎 蒼花は無意識にお蕎麦について考えた。兄、須崎 蒼志も考えた。
にこにこと去ってゆくショートカットに眼鏡の少女を少しだけ目で追い、それから振り返って彼女が来た方を見た。そこが、兄・蒼志が探していた店だった。
「ども……」
蒼志は陽太に妹を紹介する。
「妹の蒼花っす……」
蒼花が名乗って挨拶をすると、陽太はにこやかに笑った。
「来てくれてありがとー♪ 呉井陽太だよぅ」
「……呉井……？」
怪訝そうな顔をした蒼花に、蒼志が尋ねる。
「知り合いか……？」
「え……ううん……」
すると陽太には心当たりがあったようだ。
「え？ 聞いた事ある苗字？ おー、もし中学二年ならオレの弟かも。会ったらよろしくねぃ」
「はい……って、兄さん何を……？」
見れば、蒼志が和菓子マグネットを口に運ぼうとしているではないか。
「わぁ……っ！ 蒼志君、ソレ食べちゃダメェ……！」
陽太が慌てて止める。
「注意書きよく見てっ。食べられませんって書いてあるでしょーダメだよぅ」
蒼花はあまり表情を動かさずにそっと兄の袖を引っ張る。
「兄さん……冗談がわかりづらいよ……ほら、呉井さんだってびっくりしてる……」
「え？ 冗談なの？」
「いやまあ……」
と蒼志はじっと和菓子マグネットを見つめて、
「上手くできてるんで美味そうだな……って。案外舐めてみれば甘いんじゃないだろうか……」
などと言って、もう一度あーんと口を開き……。
「あわわ、蒼志君！ お腹壊すよぅ」
「……いや、冗談……本当に」
「こんな兄ですがよろしく……」
無表情なふたりに陽太は涙目。
「うわーん、冗談のときは冗談っぽい顔してよぅ！」
こうして妹と自分の分としてふたつ和菓子マグネットを購入すると、蒼志は妹とふたたびバザーを巡り歩いた。兄だからだろうか、蒼花がこの喧騒を楽しんでいるのは気配でわかる。
（いつも心配かけてるみたいだし、礼代わりにはなったかな……うん）
一方蒼花も思っていた。
（高校はとても賑やか。……兄さんも高校生活は楽しめてるみたい……二年後、ここに通うのが楽しみかも）
「……もうちょっと見てまわるか」
兄が妹に声を掛ける。妹は一瞬兄を見つめ、人知れず咲く野の花のようにほんのすこしだけ笑む。
「……うん」
和風のクロスが敷かれたテーブルに、品のよい和紙を敷いた漆塗りの盆が載っている。和紙の上には竹楊枝を添えた和菓子が三つ。まるで高級和菓子店から取り寄せた本物みたいだが、隣に置かれた和風のプライススタンドには『※食べられません』の文字。
呉井 陽太は手先が器用で、粘土細工や陶芸が得意である。盆の上の本物みたいな和菓子は、樹脂粘土で作ったもみじ饅頭、三色団子、おはぎの３種の和菓子マグネットなのだ。
「こんにちはー」
蕎麦屋すすきの看板娘、薄野 五月が陽太を見かけて顔を出した。
「どーも、いらっしゃーい」
「ほほう、これは……和菓子マグネットですかー。以前、うちににお食事に来て下さった時に、樹脂粘土で小物やアクセサリーを作っているとお伺いしてからぜひ一度、呉井さんの細工物を拝見したいなぁと思っとったんですー」
「それは嬉しいねぃ。どうぞどうぞ、じっくり見てよぅ」
五月はためすすがめつ和菓子を眺め、満足そうに笑った。
「このマグネット、とても美味しそうですねー、ふっふ。和菓子と一緒に並んどったら、本物と間違えて、食べてしまいそうになりますねー」
「食べたらだめだよぉ？」
「わかってます。でも和菓子と並べて驚かせてみたいとか、ほんのり悪戯心も働きます。ふっふ」
こちらをくださいな、と五月がマグネットを購入すると、陽太はそれを和紙の包みに入れてくれた。
「素敵な包みです。こんなところまで拘りがあるんですね」
「あるんだよぅ。お買い上げありがとーございまっす♪」
陽太が笑顔で手渡すと、五月はそうそう、と振り返った。
「演説、聞きました。頑張って下さいー」
「ありがとう。頑張るよぅ」
五月は手を振って、それから包みをもう一度そっと開けてみた。
「可愛い……すすきのでも、家でも、使うのが楽しみですね。ふっふ」
歩いていると、何やら物静かな雰囲気のカップルとすれ違う。どこか面差しが似ているから、兄妹だろうか。すると兄のお腹がぐぅ、と鳴り、妹が気遣わしげに声を掛ける。
「……何か食べる？」
「……いや」
「私があまり食べないから遠慮してる……？」
「……一緒に食事をするといつも俺ばかり食べて待たせてしまうからな……」
「……別にいいのに……」
「すすきのー、すすきのー」
五月はひとり言みたいに歌う。
妹の方は食が細いのかもしれない。そんな人にはお蕎麦もおすすめだ。
「さっぱり美味しいお蕎麦のすすきのー」
妹、須崎 蒼花は無意識にお蕎麦について考えた。兄、須崎 蒼志も考えた。
にこにこと去ってゆくショートカットに眼鏡の少女を少しだけ目で追い、それから振り返って彼女が来た方を見た。そこが、兄・蒼志が探していた店だった。
「ども……」
蒼志は陽太に妹を紹介する。
「妹の蒼花っす……」
蒼花が名乗って挨拶をすると、陽太はにこやかに笑った。
「来てくれてありがとー♪ 呉井陽太だよぅ」
「……呉井……？」
怪訝そうな顔をした蒼花に、蒼志が尋ねる。
「知り合いか……？」
「え……ううん……」
すると陽太には心当たりがあったようだ。
「え？ 聞いた事ある苗字？ おー、もし中学二年ならオレの弟かも。会ったらよろしくねぃ」
「はい……って、兄さん何を……？」
見れば、蒼志が和菓子マグネットを口に運ぼうとしているではないか。
「わぁ……っ！ 蒼志君、ソレ食べちゃダメェ……！」
陽太が慌てて止める。
「注意書きよく見てっ。食べられませんって書いてあるでしょーダメだよぅ」
蒼花はあまり表情を動かさずにそっと兄の袖を引っ張る。
「兄さん……冗談がわかりづらいよ……ほら、呉井さんだってびっくりしてる……」
「え？ 冗談なの？」
「いやまあ……」
と蒼志はじっと和菓子マグネットを見つめて、
「上手くできてるんで美味そうだな……って。案外舐めてみれば甘いんじゃないだろうか……」
などと言って、もう一度あーんと口を開き……。
「あわわ、蒼志君！ お腹壊すよぅ」
「……いや、冗談……本当に」
「こんな兄ですがよろしく……」
無表情なふたりに陽太は涙目。
「うわーん、冗談のときは冗談っぽい顔してよぅ！」
こうして妹と自分の分としてふたつ和菓子マグネットを購入すると、蒼志は妹とふたたびバザーを巡り歩いた。兄だからだろうか、蒼花がこの喧騒を楽しんでいるのは気配でわかる。
（いつも心配かけてるみたいだし、礼代わりにはなったかな……うん）
一方蒼花も思っていた。
（高校はとても賑やか。……兄さんも高校生活は楽しめてるみたい……二年後、ここに通うのが楽しみかも）
「……もうちょっと見てまわるか」
兄が妹に声を掛ける。妹は一瞬兄を見つめ、人知れず咲く野の花のようにほんのすこしだけ笑む。
「……うん」
シナリオ
シナリオデータ
シナリオスケジュール
- シナリオガイド公開日
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- 2015年04月19日
- 参加申し込みの期限
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- 2015年04月26日 11時00分
- アクション投稿の期限
-
- 2015年04月26日 11時00分
