【生徒会選挙】歴代生徒会長からの挑戦状～寝子高バザール！｜リアクション

【生徒会選挙】歴代生徒会長からの挑戦状～寝子高バザール！

●八神陣営：動物執事とメイドの猫喫茶『ｃｈａｔｏｎ』　その２

　朝摘みの薔薇を中心に、アイヴィ、桔梗、シンフォリカルポス。緋紅朱赫乃が作成した薔薇のアレンジ【バザールの小さな秋】が、店内を華やかに彩っている。
　薔薇と同じような赤毛をした星ヶ丘のオレンジ動物病院の獣医、ジェレミア・ベルトーニがそれらのアレンジをじっくりと眺めていた。
「いらっしゃい、ませ……お花、すき、ですか？」
　ゴシックドレスの上から白いエプロンをつけた赫乃が声を掛ける。ジェレミアは赫乃の赤いうさ耳を「可愛いね」と褒めてから、花は好きだよ、と言った。
「自宅の庭でも育てているが、他人が丹念に育てた花を愛でるのも大好きなんだ。この薔薇達は随分愛情込めて育てられているね？　とても素敵な花達だよ。素晴らしい」
「ありがとう、ございます……私が、育てました」
「え、お嬢さんがこの薔薇を育てたの？　それは凄いね」
　ジェレミアは心から感嘆した。
「では、この子達を貰って行っても良いかな？」
「はい、……お好きな、ものを、どうぞ」
　様々なアレンジの中からジェレミアが選んだのは、赤中心のひと品。
「赤色と言っても薄い色から濃い色まで、色々な色があって楽しませてくれるよね。この花達の素敵な姿がとても気に入ったよ！　上手に世話をしたら、１ヶ月以上は持つからね。うん、とても良い買い物ができた。来て良かった」
　そう言ってもらえると赫乃も嬉しい。はにかんだ頬がほんのりと朱に染まる。
「いい人に、買ってもらえて、この子たちも、喜んでる、と思う……」

　猫パスを貰ったジェレミアは修と修の仔猫たちに挨拶をし、ふれあいスペースでしばし猫と戯れる。
「おや、八神君のにゃん達は学校の為にも働くのかい。けなげだねぇ」
　仔猫たちはジェレミアが揺らすねこじゃらしに、我先にと飛びついている。

　須藤清一郎が猫喫茶に顔を出した。
「まいど、八神。儲かっとるか～。あ、これ差し入れな」
　関西から引っ越してきたこの軽い少年は、ジュースの差し入れを持ってきてくれた。修は友人に礼を言う。
「ありがとう。良かったら見て行ってくれ」
「見たけど俺向きじゃあらへんっていうか女の子っぽいのが多いなぁ。八神～、売上貢献するから誰か紹介してや。買うても、送る相手誰もおらんねん」
「それは自分で見つけるものだろ」
　修がぴしゃりといい放つ。
　なるほど正論だ。清一郎はパッと見て目に留まった薔薇のアレンジを購入すると、誰か可愛い子はいないかな、と通りかかる女性たちに眼差しを向け始めた。

◇

　その頃。
　選管のトランシーバーからは班に分かれた委員からの連絡が激しく入り乱れ流れていた。
「こちら３班！　Ｄブロックで両替発生。会計班は至急Ｄブロックに来てくれ」
「こ、こちら管理委員１５班！　東門から旧市街地区の一般客が到着！　お、多すぎる……！　１４班が足止めしてますが、誘導間に合いません！　お、お、応援求む！！　どわーッ！」
「８班よ！　Ｆブロックで小さな女の子が擦りむいて膝に軽い擦り傷！　救急箱持ってきて」
　これらのオーダーを取りまとめ捌いているのが主に都築弦一郎で、「博美と綾花は１５班の応援頼む」だとか「寝太郎はＦに救急箱持って行け」だとか先輩らしく指示を出している。

「マリベル」
　お客さんにパンフレットを配ったり案内をしたりしていたマリベル・ロイスは、トランシーバーから聞こえてきた弦一郎の突然の呼びかけに慌て気味に応える。
「はい、こちら５班マリベル」
「Ｃブロックに迷子の子がいるらしい。外国人っぽいからそっちで頼む」
　マリベルは、幼い時から音楽家の両親の海外遠征に同行していた経験を買われ、自然と外国人担当のような位置づけになっていた。
「よーし、ウチの出番やな。なんとか英語で案内するで。がんばるぞ！」
　迷子の特徴を聞くと、マリベルはＣブロックへ走り出す。
　
　その子はすぐに見つかった。白い髪、白い服。とにかく真っ白な女の子。
「ハロー？」マリベルは話しかける。「ホワッツ、ユアネーム？」
「……ゼロはゼロなのです」
　ゼロ・シーアールシーであった。
「あれ？　日本語話せるん？」
「話せるのです」
「そっか。じゃあ日本語で。一人なん？　迷子になっちゃったんか？」
「小学校のともだちと来たのです。ゼロは迷子ではないのですが皆がいなくなったのです」
「そうなんだ。じゃあ、ウチと一緒にともだち探そ？」
　マリベルはにっこり笑うと、ゼロの華奢な手と手を繋いだ。

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