【生徒会選挙】歴代生徒会長からの挑戦状～寝子高バザール！｜リアクション

【生徒会選挙】歴代生徒会長からの挑戦状～寝子高バザール！

●天満陣営：秋津屋

　暁桜逢莉を誘って色々と見て回っていたエルカディア・シュルツは、秋津屋の前ではた、と足を止めた。扱っている和風の小物がエルカディアの心をくすぐったのはもちろんなのだが、店主――天満七星の美しい黒髪がまるでヤマトナデシコのようで、それも含めての和の世界に魅入られたからだ。
　七星が万華鏡みたいに色とりどりのとんぼ玉根付を広げて見せる。
「昔の雰囲気がちょっと懐かしい、すてきな小物はいかがですか？　机にある完成品以外にも好みのものをつくりますわ！」
「へえ、トンボダマかあ……！」
　トレイの中でころころと遊ぶ、模様のついたガラス玉は、色も大きさも様々だ。森のような緑、紅葉のような赤、煌めく星が散っていたり、花が舞っていたり、まるでひとつずつ違う宇宙を覗きこんでいるかのよう。
「不揃いだったり歪んでいるものもあるのですけれど、それも手作りの味なので、お好みで選んでくださいね。完成品もありますし、自分で選んだ組み合わせでこの場で作る事もできますよ」
　基本はとんぼ玉１個とビーズ２個の組み合わせだが、±１個程度なら対応できる、と七星は説明する。
「やっぱり日本の芸術品は素晴らしいね」
　エルカディアは目を輝かせてひとつずつ手に取ったり、空に透かして見たりする。
「エルくんは日本の品物がお好きなんですね。わたくしもこんなユウガなものにはほれぼれしてしまいます！」
　ふたりが一緒になってトンボ玉を吟味していると、ミルカ・アハティアラがやってきた。

「わぁ……きらきらしてて宝石みたいですね。３５０円ですか、これなら……」
　一瞬の出会い、一瞬の運命。ミルカが手に取ったのは水中花のとんぼ玉だ。
「まるで水の中に花を閉じ込めたみたい……」
　一目で気に入ってすぐにお買い上げ。七星にストラップに仕上げてもらう。
「こんなのが作れるなんてすごいです！　……まだ携帯電話は持ってないけれど」
「鞄につけても可愛いですよ」
　それを聞き、ミルカは頷いた。そうだ、休日用の鞄につけたらすごく可愛いに違いない。
　それから、アドバイスをしてくれた七星のことをまじまじと見る。
（落ち付いていて大人っぽいなあ……あ、そうだ）
「バザーがんばってくださいね」
　ミルカは可愛らしい包み紙のキャンディを差し入れた。
「まあ、ふふっ。ありがとうございます」

「ミルカちゃん、いいものを選ばれましたね。わたくしはどうしましょう……春欄秋菊でそれぞれステキで悩んでしまいます」
　逢莉が熟考する間に、エルカディアにも運命の出会いがあった。
「これ、いいな。青と茜色が混ざり合った空間に薄いピンクのコスモスが咲いていて……この小さな球体の中に『日本の秋』が詰まっているみたいだ。これください！」
「はい」
　七星があっという間に仕立ててくれて、お金を払って、はた、とエルカディアは逢莉を見つめた。
「よかったらプレゼントするよ」
「……え、これをわたくしに、ですか？　まあああ！　くださいませ」
　受け取った逢莉は、それをうっとりと空にかざした。
「夕焼けに染まりかけた空と、コスモス……きれい……」
「はは、そんなに喜んでくれて嬉しいよ。ボクよりも、アイリのようなかわいい女の子が持ってた方がこのトンボダマも喜ぶ気がしたんだ」
　殿方からプレゼントを頂いた上にかわいい、ですって！
　逢莉は嬉しくなってくるくると回り、それからはっと我に返って、トレイの中から深い青に金魚の描かれたものを摘まみあげると、七星に代金を払い、エルカディアへのお返しにした。
「これなら大人らしさがあって男の子でも似合いますし、それにエルくんの瞳の色とおそろいです！」
「キンギョかあ……これも日本の美しさのひとつだね、すごくキレイだ」
　エルカディアはとくとくとそれを眺めたのち、
「ありがとう、大切にするよ」
　と、トンボ玉とお揃いの深い青の瞳を細めた。