夢の晩餐｜リアクション

夢の晩餐

　逆巻天野、御剣刀、桜庭円の三人は、並んで食卓に座っている。

　円の前には、青々としたピーマン。

　これはしってる。海美は頷く。
　だけど、このしょくじにでているということは。
　そして、ピーマンを前にしたおねーさんの、深刻な表情を見ると、やはり。

「やっぱり、たべたらしんじゃうの？」

　海美のろっこんは「世代を越えて話をあわせられる」という能力だ。

　背景知識がなくても、それらしく話すことができる。

　
　現状ではとくに背景知識を得ないほうが、円との話を弾ませることができる。
　ろっこんの発動は最小限に。
　もともと人懐っこく、会話能力の高い海美、ろっこんを的確に使いこなす。

「食べるっていうか……食べられちゃうんだな」ぶるりと怖気をふるって、円が話す。
「たべられちゃうのー！」海美は絶叫した。
「ピーマンが人間になるんだ」
「うそー！」

（ばけものピーマンだ！）
　もちろん海美は普段ならそんなことを信じない。
　だが、度重なる恐怖により、彼女はすっかり勘違いしていた。

「そのシーンがぐろくってー」
「映画の話か」傍らの刀がたしなめる。
「……あれは今から１０年前」
　まどか６ちゃい、幼少の砌。
　父親のひざの上で見たのが、カルト映画「ダンス・オブ・キラーピーマン」。
　なぜそんなものを見たのか。

　巨大ピーマンが人間を食べ、踊るピーマン人間と変化させる。
　最終的にはほとんどピーマンになって、無人の都市をピーマンが踊る。
　巨大ピーマンが次なる星を求め、大気圏にテイクオフするシーンは、一部マニアで有名だ。

「子供心が深く傷ついた」円はがばっと顔を上げる。「その日の夜が、ピーマンの肉詰めだよ！」
「それで、ピーマンがダメなのか」刀が頷く。
「トラウマ！　トラウマだよ！　……心に傷を負って、それ以来食べられないんだ」
　深刻な顔でうつむく円。
　しかし「言い訳だろ」と軽くいなす刀。
「そうじゃない！　決して、頑張って食べようとして『苦いからむーりー』って放り出したわけじゃないよ！」
「トラウマか……」呟く刀。

　彼の目の前にあるのは激辛カレー。