【中間テスト】テスト狂想曲　～先生問題作ってよ？！～｜リアクション

【中間テスト】テスト狂想曲　～先生問題作ってよ？！～

＊五十嵐先生の場合（その１）：ある意味通常運行な化学室

（ううむ、これはやはり……ろっこんの仕業か？）
　真面目な顔で考える鷹城空は首をかしげながら化学室の前にいた。担任である五十嵐尚輝の事が気がかりでココへ来たようだ。
（事件という程の事ではないだろう。だが、学校の問題を解決するのは、生徒の役目。いいだろう、私が解決してやろうじゃないか）
　内心、テスト問題を知る事が出来たらいいな、と思いながら扉を開けると既に、２人の女子生徒が尚輝の傍にいた。
　１人は溌剌とした笑顔が特徴の奈良橋博美。もう１人は、ふんわりとした雰囲気が特徴の御巫時子であった。
　普段以上にぼんやりとした様子の尚輝。そのぼさぼさとした髪からは小鳥が顔を覗かせ、さえずっている。まぁ、無自覚なもれいびである彼のろっこん『バードサンクチュアリ』は怪現象を察知すると、このように小鳥が出てくるのだが……。
　その様子に博美も時子も心配そうだった。空に気付いた２人は手招きする。
「先生は、ずっとこの調子なのか？」
「あぁ。俺たちもさっき来たところだったんだが……」
　博美が説明する。その傍らで時子は１つ溜息をついた。

　少し時間を遡る。時子は職員室で美和達の会話を偶然聞き、心配になってここへ来た。途中、校庭を飛ぶスズメやハトから話を聞くに、他の先生がたの様子もおかしい、やら、尚輝が普段以上にぼーっ、としていて危なっかしい、とかビーカーに直接インスタントコーヒーの粉を入れていて不思議だった、とか聞こえてきた。
（少しでもやる気が出るといいのですが……）
　と、時子は小ぶりな袋を見て心配そうな顔をした。今日はコーヒー豆（既に轢いてある物）を持参したのだ。酸味はほどほどで、しっかりとしたコクがある物だと店員さんが言っていたのを思い出す。
（これを先生が普段やっているように淹れてみましょう）
　と、化学室へ入ろうとしたとき、博美と出くわしたのである。彼女は、割と化学という教科が好きなようで、テストがなくなるのは嫌だな、と思っているようだ。
「やっぱり、テストをちゃんとうけたいんだ。先生には、やる気を出してもらわないと……」
「そう、ですよね……」
　博美の言葉に肯き、時子は化学室の扉を開けた。
　そして現在。時子、博美、空の３人はぼーっ、と景色を見ながらコーヒーを飲む尚輝に向き直っていた。
　まず、時子は尚輝の髪から顔を出した小鳥に微笑みかけ、話しかける。彼女のろっこん『鳥の囀り』は鳥との会話を可能にする。
『こんにちは。先生のことでお話が……』
　時子が話しかけると、小鳥はひときわ大きく鳴いた。
『なんかおかしいよ。みんなのやる気がぐっと減ってるんだよ』
　と、小鳥は時子へと不安を話す。問題解決のヒントになるような事は言っていなかったが、他の先生がたがやる気を失ったのもおなじぐらいの時間であることが解った。
　その間に、博美と空が尚輝に話しかける。最初に博美が静かに口を開いた。
「先生は、試験問題を作り終えた満足感と倦怠感で過ごしているんですか？」
「……いいえ。まだ、問題は……、作っていません……」
　これで作られているのならば安心できた博美だが、予想通りの回答に内心不安を覚える。尚輝の言葉を受け、空が溜息をつく。
「先生、職務怠慢はいけないぞ。私達は、中間テストの問題を作ってもらわないと困るんだ」
「解っては……いるの、ですが……やる気が、でなくて……」
　空の言葉に少しうつむく尚輝。どうすればやる気がでるのか解らないが、どうにか力になれたら……と、博美と時子が考えていると、空がとん、と胸を叩いた。