ドキッ☆　男だらけの料理教室！　～ペロリもあるよ～｜リアクション

ドキッ☆　男だらけの料理教室！　～ペロリもあるよ～

もう少しで夕方６時になるかという頃。
キッチンスタジオ【カトゥス・マギラス】の一室では男性限定の料理教室が始まろうとしていた。生徒たちは受付で登録を済ませて教室に入ると、自分のネームカードが置かれている席に座る。ネームカードには安全ピンがついており、エプロンに付けられる仕様になっていた。参加者は高校生が中心だったが小さな子供もいる。例えば鬼崎葉月。小学４年生の彼は生徒の中では最年少だ。少し緊張した面持ちで教室に入ると、エプロンを身に着け、ノートと筆記用具を机に出してきょろきょろとあたりを見回した。
どうしたんだろう、心細いのかな。
隣に座っていた天之川麗仁が落ち着かない葉月の様子に気が付く。麗仁は少女のような愛らしさのある美少年だ。隙間なく埋められた長いまつげを伏せ、傍らの葉月に
「こんにちは。ひとりで来たのかい？」
と、微笑みかける。葉月は一瞬目を大きく見開き、続いて「うん」と照れたように頷いた。
「すごいね。料理が好きなのかな？」
「う、うんっ。俺の家、餃子屋なんだ。いつか母さんみたいな餃子を焼けるようになりたいから、今から一生懸命練習するんだ！」
「そうなんだ。お母さんが目標なんだね」
「母さんの餃子は最高で、とってもとっても最高なんだぞ」
両手の拳をにぎりしめて力説する葉月を見て、麗仁は心が温かくなるのを感じた。同時に共感も覚える。麗仁も……実の母親ではないが、母と慕う人に頑張りを認めてもらいたくて参加したから。
「兄ちゃんは料理が好きなのか？」
「ううん。家庭科系は大の苦手。今度、学校で調理実習があってね。頑張ろうって思って」
「そっか！　へー！」
「包丁とか残念でも、笑わないでおくれよ」
麗仁が上目づかいで照れくさそうに話しかけると、葉月は数秒石になり、ぷるぷると首を振った。
「そうだよ、こんな可愛い人が女の子のはずがないよ……！」
「どうしたの、葉月君」
「な、なんでもない！　それより名前……」
「ネームプレートを見たんだよ。よろしくね、葉月君」
「う、うん。よろしくね。麗仁兄ちゃん！」
葉月は尻をもぞもぞさせながら、両手の人差し指をつんつんとあわせつつ明るい声で叫んだ。

時間ぎりぎりに到着したのは高梨煉である。本当は早めに来たかったのに、今日に限って先生の資料運びを手伝わされてしまった。急いでいたのだろう。肩で息をしながらドアを開けた煉を見つけ、宇佐見望月が片手をあげて声をかけた。
「おー、煉ちゃん！」
「望月じゃないか。お前も来てたんだな」
「おう！　あ、席な。そこに書いてある。煉ちゃん、俺様と同じB班だぞ。ラッキーだな♪」
煉が望月が指差した先を見ると、ホワイトボードに班分けが載っていた。５人ずつグループを作って調理を進めるようだ。

■A班
呉井陽太
刻人・F・ミセリア(遅刻)
須崎蒼志
千鳥雅人
御剣刀

■B班
天之川麗仁
宇佐見望月
鬼崎葉月
高梨煉
八神修

煉は持参のエプロンを身に付けながらB班、次にA班に頭を下げた。
「高梨です。本日はよろしくお願いします」
「よろしくお願いします。先生はまだ来てないので、ゆっくり準備しても大丈夫ですよ」
「それを聞いて安心したよ。ふう……」
八神修に言われ、煉はシャツの胸元をぱたぱたとあおいだ。

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