秋風ボートレース！｜リアクション

秋風ボートレース！

　修の目は、彼方に霞む立橋の姿をとらえていた。
　あれは寝子島連絡橋。あそこを越えれば、ゴールまで目前。
　船は持つ。持たせる。レースは、まだ終わっていない。
　鼻先差でもいい。優勝を信じて、一気に駆け抜ける！

　彼の姿をみて、もう一艘の船が滑り出す。
　刀。船体のサンマさんは若干傷を負っている。
　負けず嫌いな彼。どのような状況でも、楽しみ抜くと決めた彼。
　一声張り上げて、オールを漕ぎだす。

　嵐はいつの間にか消し飛び、空には壮麗な夕暮れが広がっている。

　蒼茫と暮れゆく天地。
　疾走する二艘のボート。
　彼方に、幻影のように霞む、巨大な橋脚。

「そうよ！　こういうお祭りごとは、全力で参加してこそ、楽しいのよね！」
　哄笑を放ち、再びオールを漕ぎだす蛇那伊。

　オールを捨てる修。
　姿勢を低く取り、風圧を減殺する。
「機械を使うのなら、俺にだって……！」
　その瞳は、まっすぐゴールへ。
「……ゴール後、エンジンが焼け付いても構わん！」

　彼に追いすがるサンマさん。
　刀は集中する。負けず嫌いな彼。
　あくまで勢いを殺さない。楽しめ！　楽しめ！
　声を張り上げ、最良の速度を肉体でたたき出す。

　ワー！　キャー！
　ゴール地点の歓声が響いてくる。

　そして、彼ら二人の背後から現れるのは……。