【体育祭】フリーダム！ネココー流応援合戦～黒猫組サイド｜リアクション

【体育祭】フリーダム！ネココー流応援合戦～黒猫組サイド

「応援タイムも推薦でエントリーしてたのよ。びっくりしちゃった」
　続いて現れたのは、チアガールの衣装に身を包んだ尾鎌蛇那伊だった。フリフリのスカートとぴったりのタイツが特徴の、黒猫をイメージした衣装だ。
　観客席に向かってウインクすると、演技スタート。披露するのはバトントワリングだ。
　両手に持った2本のバトンを、まずは手元で回し始める。皆に笑顔を振りまきながら、四方から見えるよう少しずつ向きを変えつつ華麗なバトンさばきを見せる。最初引き気味だった観衆も、魔法のように動くバトンに魅了されていった。
　まず、バトンを上に放って一回転してからキャッチ。続いては、2本のバトンを投げてキャッチする。今度は背面キャッチだ。技が決まるたび、拍手が起きる。
　観衆が固唾を飲んで見守る中、蛇那伊は余裕の笑みで片方のバトンを投げ上げる。落ちてきたバトンを、手元のもう１本のバトンで下から叩き上げてまた宙に浮かせるテクニックだ。
「フィナーレよ！」
　蛇那伊は軽快な動きでグラウンドの隅に移動し、ラストの見せ場に入る。2本のバトンを斜め上の空中に高々と放りあげると、助走をつけ、側転とバク転を繰り返して反対側の隅に移動する。着地を決めたところに、2本のバトンが綺麗な放物線を描いて落ちてくる。
　華麗にキャッチして、最後のステップを踏む。グラウンドはその超絶技巧に、割れんばかりの拍手に包まれた。
　審査員の先生たちも、興奮気味に講評する。
「応援旗リレーを終えたばかりとは思えません！運動技能としては文句なしの満点です！」
　と、まゆ先生。
「ファンタスティックでした！動きの美しさもさることながら、衣装の艶やかさもまた最高だったわぁ！」
　と、フジコ先生。
「心技体の三拍子の揃ったパフォーマンスでした。合議の結果、得点は90点とします！」
　と、校長。
「みんな、ありがとー！」
　蛇那伊は歓声に手を振って答えながら、ステージを後にした。

「……まあ、こうなることは予想しておった」
　女物の和服に身を包んだ夏神零は、仕方ないといった様子で呟いた。クラスから上がってきた衣装の案が、全部女物だったのだ。白猫組ということもあって、清潔感のある白を中心に、自分のカラーである赤色をアクセントとして添える着こなしだ。
　白猫組の出し物は数が少ないため、零のパフォーマンスは2回に分けて行われる。ただし、持ち点は100点のままだ。
「頑張ってねぃ」
「かたじけない。拙者は芸術科ゆえ、皆が少しでも和に興味を持ってくれればそれだけで幸いでござる」
　裏方に回った呉井陽太に見送られ、舞台となるグラウンドへ。
　零は、雅楽で使われる横笛を構えた。笛の音とともに、優雅な舞台が幕を開ける。笛の演奏に続き、今度は鼓を打ちながらゆったりと舞いながら、グラウンド中央に移動する。
　グラウンドには、座布団と見台（テーブル）、扇子と手ぬぐいが用意してあった。零は座布団に座ると、古典落語「ちりとてちん」を演じ始めた。
「世の中には、損とわかっていても知ったかぶりをする御仁がどうにもいらっしゃいます。この噺に出てくる若旦那も、その一人のようで……」
　噺の前に導入となる「まくら」を入れて、本筋に入る。腹から出した声は、張り上げていなくても良く通る。
「これは……豆腐が腐っておるではないか！」
声色で登場人物を演じ分ける軽妙な演技で、観客席はどっと笑った。
「……豆腐が腐ったような味でござった」
　オチとなる「サゲ」で落語は終了。零は上々の感触で舞台裏に戻った。まだ後半が残っているので、採点は後回しだ。