黒くて毛むくじゃらの憎い奴｜リアクション

黒くて毛むくじゃらの憎い奴

●怪物の正体
噂が広まり始めて暫く経ったある日の授業中。
校庭の桜の木をぼんやりと眺める逆巻天野。
窓からの吹き込む風に短めのポニーテールがさらさらと揺れる。
彼の手元にあるノートには走り書きが見える。
『何故目撃がまばらなのか？』
その命題の周囲には、これまでに考えついた幾つかのキーワードが並ぶ。
しかし、どれも腑に落ちなかったのかその全てが消されている。
窓に、一匹のミツバチが止まる。
その脚には花粉を沢山付けている。
下の花壇から飛んできたものだろうか。
はっとした天野は命題の下にキーワードを書き足した。
『群れ』と。
一匹が巨大化したものであれば目撃者が少ないのは不自然だ。
しかし、もともと小さなものが群れになって大きく見えていただけだとすれば…？
自身ももれいびである天野は人間以外にもろっこんを持つものがいる事を知っている。
能力イメージは誘惑？磁石だろうか？
発動条件は？人に反応？それとも音か、いや自身の危機はどうだ？
思考はめまぐるしく駆け巡った。
「調べる価値はありそうだ｣
折しも終業のチャイムが鳴った。
考察をメモしたページを定規を当て丁寧に切り取って折り畳むと、紙飛行機にして校庭に飛ばす。
天野はその行方を目で追う事もなく教室を後にした。

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