チャリンコのお悩み、解決します｜リアクション

チャリンコのお悩み、解決します

「まきびしがまいてあった？ホンマかいな」
「本当よ、他にもパンクさせちゃった人がいるもの」
　たまたま店で一緒になり、会話を交わしていた篠原翠響から、何とも妙な情報を聞いた須藤清一郎は、思わず好奇心を刺激された。
「しかし誰がまいたんやろ……むっちゃ気になるなあ」
「それ以前に迷惑よね～」
　普段は可愛らしい印象の翠響だが、自転車をパンクさせられて、さすがに気分が良くないようだった。
「それは、俺も気になるな」
　清一郎は、声のほうを振り向く。ヘルメットを片手に持った少年が立っていた。
「何人かパンク修理をしているから声をかけてみたら、広範囲にまきびしがまかれているらしい。修理が終わったら、調査してみようと思ってる」
「へえ、あんた面白そうな奴やなぁ。寝子高生か？俺は須藤清一郎、体育科1年や」
「俺は八神修、普通科の1年だ。よろしく」
「よろしく。なあ八神、後で現場に行って見てみいひんか？」
「そうだね。犯人は現場に戻る。落し物だとしたら探しに来るかもしれないしね」
　ワイルドな清一郎と秀才風の修、タイプの違う二人は意気投合する。
　でも、傍で見ていた翠響にとって大事なことは別にあるようで……
「ああ、タイヤとチューブ交換で9000円近く……これ中2にはキツい出費だよぉ」
　涙目になりそうな翠響のセリフに、近くにいた少年が答えた。
「まったくだぜ！自転車修理って意外と高くつくからなぁ。簡単な修理なら俺でもできるけど」
　平凡なスポーツサイクル風の自転車を止めてパンク修理を待っているその少年、見た感じは高校生くらいか。
「そっかぁ、あたしも誰かに頼めばよかったかもね」
「ああ、ちょっとしたパンクくらいなら、この山田勘三郎さまが直してやるさ！」
「それなら、次はお願いしようかしら。マンション住まいだから、意外とこういうとき頼るご近所さんがいないの」
「ああ、いいぜ。でも、こういうのは無理だ。見てくれよこれ、素人の手には負えねえな」
　勘三郎が指さした先をみると、無残にぱっくり裂けたチューブがあった。
「最近の忍者は爆薬入りのまきびしでも使うのかよ……。派手な音がしてパンクしたから、はるばる家まで引いて直そうとしたらこのざまさ。痛い出費が……そうだ！」
　彼は何か思いついたらしい。
「店員さん！手伝うから修理代、ちょっと負けてくれませんか？どうせ待ち時間は暇なんで！」
　実は修理代は親に出してもらっているので、差額を懐に入れる魂胆なのだが、それは内緒だ。
「あは、それは無理じゃないかな？」
　翠響は勘三郎の必死なアピールに、思わず笑った。