【体育祭】部活対抗リレー　―つないで、魅せて、走りぬけ―｜リアクション

【体育祭】部活対抗リレー　―つないで、魅せて、走りぬけ―

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＊バトンの着脱は要注意？
　新聞部のバトンは、改造した新聞部の腕章である。というのも『慌てて留めようとして仲間の腕を刺すと危ないため』であり、同色の布とマジックテープを縫い足して誰の腕でも関係なく上から巻き付けて留められるようにしてある。
　その取り付け・取り外しの練習もしなくては、と遠矢護は1人改造腕章を手に考える。
（やっぱり、走る練習も大切だけどバトンパスも大切だよね）
　と、思い浮かべたのは第３走者である立井駒鳥の事。第２走者の護は彼に渡すのだ。一緒に練習したほうがいいかな？　と思って声をかける。
「そうじゃの。確かに練習しておくに越したことは無いな」
　と快くつきあってくれる駒鳥だが護はもじもじと少し照れてしまった。
（ダメだ、照れてる場合じゃないんだ。がんばらないと！）
　外しやすい方向を探りつつ、ちょっと腕を上げてもらったりと工夫を重ねることでより腕章の取り付けを速やかにできるようになった。
「うん、これなら上手くいきそう！」
「ほかのメンバーにも伝えたほうが良さそうじゃ。そうすればリレーに役立つじゃろう」
　駒鳥は早速女子メンバー２人も呼んでくるのだった。

　その頃、維剣姫乃は複雑な心境だった。新入部員である自分がアンカーを託された為、妙にぎこちなさを覚えていた。
（ここに入部した動機が『部活対抗リレーに出たかった』からだし、嬉しくない訳ではない。けれど……いいのかな？）
　もやもやした気持ちを抱えていると、「バトンパスの練習じゃ」と駒鳥がやってきた。彼も比較的最近入部したとは話に聞いていたがその表情はとても明るい。その理由を問えば
「部活対抗リレーが楽しみなんじゃ。わくわくしとる。維剣もそう思わんか？」
「うん」
　駒鳥に肯いた時、姫乃は何かが腑に落ちたような気がした。ぎこちなさが少し取れた彼女は自然と笑顔になっていた。
　その後、体育祭実行委員の話し合いに出ていた後木真央も合流しみんなでバトンパスの練習と相成った。

＊生物部、特訓す
　――とある早朝。
（早朝の特訓、本気だったのね）
　眠い目をこすりながら神野美野梨は溜息をついた。片割れの新井すばるはすっかり目が覚めているのか、元気に体操をしている。その近くでは黄色いカナリアが気持ち良さそうに飛んでいる。その姿を見ながら前日の放課後の事を思い出していた。

「アルナイル（＝部長）と桜井は大丈夫だとして、神野さんは自信がなさそうだけど……」
　そういえば走ってるのは見たことなかったな、とすばるが言う。美野梨は少し苦笑しながら口を開いた。
「私は子供のころから足が遅かったから……。でも、生物部の活動で体力はついてると思うわ」
「確かに、……よく考えてみれば生物部って結構運動部よりだよね」
　彼女の言葉に相槌を打ち、「生き物を追って走ったり、山を登ったりガケを下りたり薮をわけ道なき道を進んだり」と活動を振り返りながらすばるは柔らかい表情で言葉を続ける。
「合宿で見た神野さんの藪漕ぎや山登りの様子からすると、足腰はできているよ。双考えると……神野さんはその自信のなさがネックかな？」
　すばるは眼鏡を正しながら目を合わせてくる。きょとんとなる美野梨に、すばるはにっこり笑って「明日から当日までボクと早朝練習ね」と言ったのだった。

（どんな練習をするのかしら？　バトンパスは確かに練習しておいたほうがいいけれど）
　と美野梨が考え事をしていると、すばるがこんな質問をしてきた。
「ねぇ、小中学生の時を思い出して。クラスでどんな子が早かった？」
「うーん、元気のいい子だったかな」
　どうにか思い出して答えれば、「そうだね」と相槌を打ってから言葉を続ける。その表情はとても落ち着いている。