コズミック焼きそばパンをこの手に！｜リアクション

コズミック焼きそばパンをこの手に！

　北校舎一階、渡り廊下前は人ごみでごった返していた。
「走らないで、静かに移動してくだいね！」風紀委員の声が響く。
「急がないと、焼きそばパンが……」どこからか上がった声に、委員が答える。「投書があったんですよ。『廊下を疾走する生徒がいて、嘆かわしい。取り締まりを強化してほしい』ってね」

　柱にはためく『廊下は静かに！』の掲示。

　これこそが、信彦第一の策『風紀委員動員』！

　前回の争奪戦において活躍したものは、何よりも身体能力に優れた者、わけても速度に秀でた者であった。
　信彦はそれを封殺する技に出た。
　風紀委員を動員することで、廊下での動きを制約！

　勝負のルールを把握し、その根幹に手を突っ込む、大胆不敵な戦略であった。

　しかし、この作戦は諸刃の刃。
　風紀委員の動員は、他の状況への余波も大きい。

　粛々と歩きながら、奈良橋博美はじっと考えていた。
　――八十八旗君……どう出る？

　前回争奪戦にも参加した博美は、今回も一歩引いて様子を見つつ進む作戦をとることにした。
　その結果後始末をする羽目になってしまったが、水際立ったやり口で、声望はいやが上にも高まっていた。
　生徒会としての責任のある仕事。
　教師を懐柔するテクニック。
　すんでのところで、自分の責任は逃れるやり口。

（他の生徒には迷惑かけられないしさ）
　ポケットに『後で修復、掃除します』と書いた紙を満載し、終わった後の掃除、フォローなども視野に入れて、彼女は作戦に望んだ。

（でも、あまりにもひどい破壊状況はスルーするけどね……）
　責任はきっちり、やった人たちがとらないと。
（オレがやったということにならないことを、祈る）

　風紀委員の登場は、博美に自分と同じ「権力の扱いに慣れた者」の予感を投げかけた。
　ルールそのものを揺さぶる。
　新しい世界の秩序を与える。
　そんなやり口をするのは、彼しかいない……。

　渋々静かに歩き出す一同……。

「どちらさんですか？！」
　その時、渡り廊下の隅から大きな声が聞こえてきた。