コズミック焼きそばパンをこの手に！｜リアクション

コズミック焼きそばパンをこの手に！

「うーん……」
　購買部のビラを見ながら、握利平は首をかしげていた。

『コズミック焼きそばパン、本日一個限定発売！』

　購買部で、新しい焼きそばパンが販売される。
　前回利平は、協力しあって限定パン入手の称号を得ることが出来た。

　利平自身は、あまり焼きそばパンの記憶はない。争奪戦のパンが異様にうまかったのは覚えている。
　今回もまた、新しいパンが出るそうなのだが……。

「コズミック？」
　ちょっと何言ってるかわからねぇ。
「コズミック……ミミズクのちっちゃいやつか何かか？」
「それ、小ミミズク」背後から、声をかけてくる奴がいる。「コズミック。宇宙的なとか、そういう意味だよ、リヘーくん」
　利平は頷く。声の主は見なくても分かる。
　
　コズミック焼きそばパン……。
　宇宙的な焼きそばパン……。
　銀河を駆ける焼きそばパン……。

　利平の脳裏には、遙か銀河の海を宇宙戦艦のごとく往く焼きそばパンの姿が浮かぶ。

「やっぱ分かんねえよっ！　八十八旗！」叫んで、声の主を見る。
「実際手に入れれば、わかるんじゃないかな」さらりと彼は言った。
　利平の目が、すっと細まる。
「当然……やるんだろ？」
「手に入れる名誉が欲しいんだ」黙って彼は手を差し伸べる。
「まあとにかく、興味は湧いたぜ！」がっしり握手して、利平は叫ぶ。「２組コンビ、復活といこうじゃねえか！」
　周りの生徒が一斉に振り返る。
　その視線を確認しつつ、八十八旗信彦はがっしりと利平の手を握り返した。

「…で、大丈夫なのか？」利平が訊く。「八十八旗、だいぶ注目されてるぜ」
「まあ、女子の視線を集めるのは仕方のないところかな」
「そういう場合じゃねえぞ」利平がコンピュータを操作する。「前回の覇者ってことで、だいぶマークされている」
　掲示板は二人の噂でもちきりだった。
　今回の争奪戦にも、信彦は参加する。
　前回信彦の取った戦略、その推移と結果までが、実によく調べられていた。

「当然さ」信彦は満足げに頷く。「僕が撒いたんだ」
　利平は信彦の顔を見る。
　信彦が前回の作戦をことのほか嬉しそうに吹聴していることも、しっかり書かれていた。
　
　すでに争奪戦は始まっている……。
　周到に仕掛けられた信彦の罠。発動の瞬間を待ち、牙をじわじわと研ぐ。