焼きそばパンＤＸをこの手に！｜リアクション

焼きそばパンＤＸをこの手に！

　校舎２階の廊下。
　彼方から、地響きのような音が鳴りわたってくる。

　先頭は朝陽。それを追う、刀ほか駿脚の生徒たち。
　わずかに遅れ、環・シダ、信彦・利平。そして蛇那伊、月乃、博美と続く。
　焼きそばパンが射程圏に入るのは、おおよそこのあたりに限られたと言っていいだろう。

　背後からのプレッシャーを感じながら、朝陽は走る。
　放さないと誓った両手は放した。だが、バトンは渡された。心はつながっている。
　そう、ピッチの上と同じ。チームの皆が支えてくれている。
　自然と彼の体は、独特のリズムを刻み始める。
　一流のサッカー選手は、ただ目的に向けがむしゃらに走るのではない。
　アクションを引き継ぎ、他人のアクションを防ぐため、全身を使う。
　流れるような体さばき。その手の振り、肩の揺れが、陽動となり、武器となる。
　煌めくイリュージョンのような朝陽の疾駆。
　彼は「体で思考」する。
「障害は、全部蹴っ飛ばしてやる！」鬼気迫る朝陽の絶叫。

　この瞬間だ。
　刀は意識を集中する。
　音が遠ざかり、世界が灰褐色に褪せていく。
　妨害時に用意していた＜切札＞。だが、蛇那伊相手では使いきることが出来なかった。
　不安定な状況での発動を控えていたのもある。
　だが、事ここに及んで、躊躇ってはいられない。彼はあまりにも『速い』。
　脳裏にレンダリングされるのは撃鉄のイメージ。冷たく光るそのトリガーに、刀は指をかける。

　ガチン！！

　瞬間。
　――脳の奥で何かがスパークした。