焼きそばパンＤＸをこの手に！｜リアクション

焼きそばパンＤＸをこの手に！

　その頃、信彦と利平は校舎裏でピンチに陥っていた。

　信彦には策があった。
　階段はあえて使用しない。
　予め窓の外に、ロッカーなどで踏み台を作っておく。
　あくまで踏み台と悟られぬよう、教師には『生徒会で使います』と報告しておく。
　さらに、ロッカーに『勝手に触らないこと！』という、教師認可の貼り紙をしておけば、悟られることはない。
　策の上に策を重ねた、信彦の戦略。聞いた利平も、にやりと笑った。
　葛洗剤でコースアウトした二人。だが、運ばれたのはちょうどロッカーの前。
　天も、自分たちの勝利を望んでいる！　信彦は内心、快哉を叫んだ。

　だが、信彦にはひとつ見落としがあった。
　他ならぬ、信彦自身の冴え。それがマークの対象であることに、気づかなかった。
　彼らの策を流用し、おこぼれにあずかろうとする生徒は、四・五人ではない。

「あーっ、やっぱり！」
　信彦と利平がロッカーによじ登ろうとした瞬間、誰かが叫んだ。
「ずるいぞ、自分だけ！」
「あたしたちも、二階に行かせて！」
　あっというまにロッカーにできる人だかり。腕をのばし、ロッカーによじ登ろうとする
　ぐらり。
　固定されていないロッカーが傾いだ。
　
　信彦は、唇をかむ。

　蜘蛛の糸……。
　地獄からの救済を手に入れようとした男は、ほかならぬ人間の業によって、地獄に逆落としになる。
　己だけ助かろうとする業の道を選ぶか。
　ロッカーを断念し、おとなしくあきらめる道を選ぶか。

　信彦はそのどれも選ばなかった。
（セコイところ見せたら、レディにカッコつかないぜ！）
　まさに業によって、信彦は自らの救済を選んだ！

「離れろ！　危ないぞ！」特にレディは、と信彦は叫ぶ。
　あわてて離れた周囲の安全を確認して、信彦は利平に言う。

「飛ぶぞ！」
「おう！」

　ロッカーを蹴り、二人は窓に飛びつく。
　利平は俊敏に校舎に入り込む。
　ビターン！　若干跳躍力のなかった信彦、校舎の壁面に顔面を打ち付ける。
　窓の桟にかかった手を、利平が引き上げる。

　信彦が侵入した瞬間と、環とシダが打ち合ったのは、ほぼ同時！
　殺到する先頭グループに、ほうほうの態で紛れ込む。

　多少時間のロスはあったものの、先頭グループに合流できた二人。
　だが、争奪戦はここからが佳境だ。