焼きそばパンＤＸをこの手に！｜リアクション

焼きそばパンＤＸをこの手に！

　物陰から姿をあらわすのは、もなか。

「また、焼きそばパン……」
　先ほど倒れていた男の子が、またここでも倒れている。
　しかしその右手には、潰れかけた焼きそばパン。
　かがみこんだもなかは、背後に人の気配を感じる。
　もう、そちらを見なくても誰だかわかる。

　そろそろ、わかりかけてきたんじゃないかしら。圭花は嫣然と笑う。

「私たちが誇りを守り奪い合うからこそ、あれは容易には手に入らず。
　容易には手に入らないからこそ、私たちはあれを奪い合う。
　……なんだかでたらめでおかしいけど、つまりそれが『焼きそばパン』なの」

　ああ、そうだ。いまの自分にはわかる。
　自分の誇りをかけて戦い、自分の力で手に入れた、それが焼きそばパン。
　この名も知らぬ少年も、きっと勇者。

　彼が最後に残したメッセージを見るがいい。
　それが、彼にとっては大事なものだったのだ。

「や　き　そ　ば　ぱ　ん」

　もなかは、ずっと悩んでいた。
　自分の力が、役に立たないのではないかと。
　だが、それは大きな間違いだった。
『役に立たない』ではない。戦って『役に立つことを証明する』のだ。

「聞いた話じゃ、今日の焼きそばパンは特別らしいわね」

　ああ、そうだ。特別じゃない焼きそばパンなんてあるわけはない。

　もなかは振り返ることなく、購買部へ駆け出す。

　見送る圭花。そしてそれを嘲笑う執。

「くっくっく……せいぜい足掻くがいい、愚民どもめ……」

　はたして、彼の胸の内にある驚天動地の秘策とは？！