焼きそばパンＤＸをこの手に！｜リアクション

焼きそばパンＤＸをこの手に！

　蛇那伊を必死で押しとどめながら、月乃は舌の上で飴玉が微妙に味を変えるのを感じた。
　昂る熱気が、飴玉を急速に削り取っている。
　飴が砕片となって、流れ去ってしまうまで、長くはもたない。
　そうすれば、ろっこんは消失する。
　そうなれば……どうもしない。
　月乃は頬笑みさえ浮かべて、蛇那伊と対峙する。
　たとえろっこんなどなくても、月乃は崩れることはない。
　彼女のふだんの柔和さに隠された堅牢な意志の牙城は、なにものにもゆるがない。
　それが彼女の真の強さであった。

　蛇那伊は、己が気おされているのを感じる。
　力ではない。蛇那伊は彼女に美を認めた。審美的な人間である彼は、その美を力として受け止める。
　霊性にみちた神獣、それを自分は相手にしている。

　まさに、美女と……。

　……野獣！！

　永劫と思われた時間に遂に楔が入る。
　ジワリ均衡が崩れ、月乃が全身をわななかせる。
　蛇那伊が彼女を振り切らんとした、その時――。

　跳躍する影があった。