焼きそばパンＤＸをこの手に！｜リアクション

焼きそばパンＤＸをこの手に！

「……どうするんだよ、あれ」
　想像を絶する破壊神の顕現に、声を失う朝陽。
　技量に秀でてはいるものの、基本的に小柄で華奢な１０組。
　まともに組み合えば、叩き潰されてしまう。

　こんな時こそ、グループ。
　力を合わせて、困難を突破する。

　窮地の時には、仲間の為に自分を犠牲にする。

（ここね……）
「志田くん、シダさん、あとはお願い」
　月乃は呟く。
　次の瞬間、朝陽とシダは、自分たちの体がふわりと持ち上がるのを感じる。

「おおっ……」
　周りから驚愕の声が漏れた。

　月乃は軽々と二人の体を持ち上げた。投球マシンよろしく両腕を旋回させると、二人の体が宙を舞った。

「とびます！　とびます！」
「うひょおおお！！

　蛇那伊は全身の筋肉をたわめ、二人を叩き落とそうとする。
　魔風の如き跳躍。しかしそれを食いとどめる、超絶の怪力があった。

「ふふふ……」
　全身をきしませ、笑みを浮かべる月乃。

　それは、なんという光景であったろう。
　男子の巨躯が、たった二本の腕で押しとどめられている。
　
　しかもそれは、筋肉など少しも見当たらぬ頼りない腕だ。
　しなやかで繊細、華を手折らせるのがやっと。
　それが、ブルドーザーの如き巨漢を押しとどめている。

　月乃のろっこん『一粒入魂！』。
　口腔に含んだ飴玉の溶け去るまで、超人的な身体能力を発揮できる。
　しかし、蛇那伊をひるませ、たじろがせているのは、それだけではなかった。

『つきのわぐま』
　シダがからかう月乃のあだ名は、しかし彼女の本質を見抜いていた。
　熊は古来より、恐怖の対象であり、また崇敬の対象でもあった。
「熊嵐」なる言葉が、熊が単なる動物の枠を超えた、人知及ばぬ存在であることをしめす。
　霊性を兼ね備えた、神としてあがめられる存在。
　蛇那伊は月乃の毅然と立つ姿に、ゆらめく意志の炎を見た。

（美しい？　……）