ねこじまフラッグファイター｜リアクション

ねこじまフラッグファイター

●大人の事情
　照り返しの強い砂浜に設置された運営テントはむせ返るくらいに蒸し暑い。にも関わらず今はさらに蒸し暑かった。原因は簡単だ。中沢リッカルド町長が司会役を申し出た骨削瓢の行動に意気揚々と興奮していたからだ。
「高校生の君が自ら率先してボランティアを申し出てるとは、なんてすばらしいことでしょう。私は非常に感激しています！」
　町長にがっしりと肩を捕まれて瓢は身動きが取れない。
「はぁ、えぃ」
　ぎらつく太陽よりも熱い町長が巻き起こす暑苦しい旋風に思わず瓢は顔をそらす。
「取り急ぎ彼にマイクの準備をしてあげてください。これは盛り上がってきましたよー」
　ようやく解放された瓢は内心しらけた様子だ。それに対して町長はと言うと嬉しそうに胸を躍らせている。
　ＤＪはやれやれと肩をすくませた。瓢に持っていたマイクを握らせる。
「これは台本だ」
　４つ折り跡のある一枚のＡ４用紙がＤＪから瓢に手渡された。
「大会は町長の都合にもかかわる。くれぐれも、大会や町長の名前を、台無しにするような真似はするなよ。いいな？」
「へいへい、あっしにだってそれくらいわかりますよぃ」
　漂う大人の事情。とりあえず今は波に乗った方が得策だろう。そう理性が語りかけてくるのであった。

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