モテモテ呪いを解け！　キャッキャウフフな悪夢の一日｜リアクション

モテモテ呪いを解け！　キャッキャウフフな悪夢の一日

【そんな空音を助けようと……できるか？】
　
「今、助けるからね……」
　北原みゆきは、その光景を見つつ路地裏にいる自分の所へと引っ張り込むタイミングを伺っていた。
　地元人のカンで、だいたいの周辺のことは把握している。
　しかし、そんなみゆきに立ちはだかるものがいた。
「……えっ？」
「もし、お嬢さん……宜しければ私に少しばかり時間を頂けませんか？」
　紳士的な佇まいと、よく通るバリトンボイス……。
　そっと、みゆきのそばに現れて、礼儀正しく一礼したのは尾鎌蛇那伊である。
「い、今は……その」
「お忙しいのですか？　私は、今魅力的なあなたとお話がしたいのですが……どうでしょう？」
　普段とは違って、男性的な魅力にあふれた蛇那伊……そして、ほかの人（少なくともみゆきが見てきた範囲）らは、無理矢理のように見えたのだが、こうして紳士的、社交的に話しかけられたので、少しだけその様子に揺れてしまったかもしれない。
「うっ……元に、戻って！　オカマさん！」
　そっと、腰に手を回されようとした瞬間、必死の叫びとみゆきなりの精一杯のビンタの一撃が蛇那伊を見舞う。普段の彼であればなんなくかわすところだが……。
「愛は受け止めるものですね……はっ」
　バシンと一撃が決まる。
「あたしは……オカマ……？　いや、男……」
　キーワードはつぶやかれる。
　それは、呪いすら凌駕する意味不明なもの。
　オカマとは女なのか、男なのか……心が女であればそれは女ではないのだろうか？
　究極の命題、選ぶべきは自己……何を選ぶか、身体を心は超えるのか……。
　超える可能性だってある。だって、それが自分の自己なのだから……。
「思い出して、あの日々のことを……」
　オカマリターンズ、ワンスモア。リメンバーオカマ。オカマビーバック。
　なんでもいいから、はよ思い出せと、
「あ、あら。あたしは何を……？」
「よかった、戻ってくれたよぅ」
　ほっとしたみゆきは、走りがてら事情を説明する。
「……あたしに、一つ策があるわ」
「えっ？　ほんとに？」
「とりあえず、猫缶をとってきてちょうだい。……その後が本番よぉ？」
　その蛇那伊の笑みは、われこそ超越者と言わんばかりの笑みである。
　さぁ、空音を助けるのだ……。