応援！　甲子園！｜リアクション

応援！　甲子園！

○突撃！　取材班

　ついにやってきた試合当日。
　バスの中で１年生野球部員のセカンド、新庄武蔵は物思いにふけっていた。
（この日の為に努力してきた。授業なんてすっぽかして野球に全てを注いできたっていってもいい）
　それだけ武蔵にとって野球はかけがえの無いものだったから。
　憧れの甲子園がバスの窓から見えてきた。

「大切な我が校の試合です、取材しない訳にはいかないのです」
　一足先に着いた新聞部の椿美咲紀が張り切っている。
「夏の特大号の記事に甲子園の結果を載せたいからな。どうやら来たようだな」
　その隣には新聞部部長の八神修。球場入りする野球部員のバスを待ち構えていた。
「にゃ、美咲紀、八神くん、来てくれたんだ！」
　バスの窓から二人を見つけ、ひびきが手を振る。
「おはようひびきちゃん！　取材と応援に来たよー」
　美咲紀はそれに答えて手を振り、修は笑顔で頷くとバスから降りてくる寝子高野球部員に声をかけた。
「おはようございます。寝子高新聞部です。少しだけお話を聞かせていただけますか」　
　試合前の集中を切らせたくないから、手短にインタビューを済ませようと思っていたが。
「インタビュー？　ぜったいに勝つよってトップ全面ガーッとあけといてや」
　二年生キャッチャーの山路源太郎はノリノリだ。
　カメラを構える美咲紀に、
「あ、写真か？　せやな試合中、わしマスクかぶっとって寝子島一のイケメンやいわれとる甘い顔見られんもんな」
　甘いというより、どう見てもごついのだが……
「せやけど、わしのチャームポイントは、このひきしまった形のええ尻やから試合中の写真でもかめへんで」
「お尻ですか……ワイルドですね」
　ちょっと返事に困りながらもにこやかに美咲紀は言う。
「そうそう、たるんどる尻やあれへん。運動やっとるけつはええけつしとるやろ？
　このけつやったら応援来てくれとる人らに向けてもバチもあたらんやろ」
　自慢の尻を見せつける源太郎。
「えーと、お尻の写真撮らせてもらってもいいですか？」
「けつの写真？　ええよ撮り」
　とびきりの笑顔で思い切りポーズを決める源太郎だったが、美咲紀がカメラを向けたのは……
「って、それわしのアゴや!」
　源太郎のアゴは、お尻そっくりなのだ。尻と言われついそっちに目が行ってしまった美咲紀。
「おおきにな、おかげさんでいらん緊張とけたわ。寝子校野球部、全身全霊がんばってくるさかい見届けたってや。ほな勝ってくるでー」
　ウィンクすると、源太郎は去って行った。
（あれで緊張してたんでしょうか……）
　ちょっと驚く美咲紀だった。

「抱負と意気込みを教えてください」
　修は武蔵に声をかけた。
「……送り出してくれた先輩達のためにも、全力で結果を出したいです」
　普段のワイルドな口調は封印して高校球児らしい答えを返し、武蔵は源太郎に続こうとする。
「あっ、ちょっとだけこっち向いてください」
　慌てて美咲紀がシャッターを切る。
「試合は勝つか負けるかの２通りしかない。本番でも普段の力を出すだけだ」
　桐島監督のコメントは、どこか受験前の意気込みのようだった。
「ありがとうございました。頑張ってください！」
　選手たちのコメントを聞き終え、修と美咲紀はエールを送った。

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