軟体これくしょん｜リアクション

軟体これくしょん

●良い子は真似しない（約束だ！）

　ガシャーン！　ガシャーン！

　立体駐車場に物騒な物音が鳴り響いた。
　優が止めてあった車の窓ガラスを次々と破壊していたのだ。

　窓を破壊した優は素早く車の中に入ると、自分のろっこん『技術者の目』を使って構造を分析。
　てきぱきと『仕掛け』を細工していく。必要な工具材料は車の整備場から『借りて』来ている。　

「来たぞ優君！　頼んだよ！」

　何台かの車に仕掛けを施した所で、睡人の車が駐車場に飛び込んで来た。
　けたたましくタイヤを鳴らしながら車が優の近くに止まると、中から蛇那伊や飛龍も飛び出してくる。
　ほどなく、巨大イソギンチャクが巨体を揺らしながら駐車場へとやってきた。

　目前にイソギンチャクをとらえると、優は手にしたスイッチをカチリと押した。
　スイッチからはコードが車へと伸びており、スイッチを押すのと同時に猛スピードで巨大イソギンチャクに向かって突進していく。

　ドォン！

　鈍い音と共に巨大イソギンチャクに車がめり込む。
　だが、巨大イソギンチャクは倒れない。

　それなら――と、優はスイッチを連射。
　次々と止めてあった車が飛び出して行く。まるで地を這うミサイルだ。

　ブォン！　ブゥオオオン！　ドォン！　ドォン！
　
　時間の許す限りひたすら細工して増やしておいた『弾』を次々と巨大イソギンチャクにブチ込む！

「わ、我ながら怖ーっ！」

　目の前に繰り広げられるミラクル大破壊な光景に、優少年は自らの行いに恐怖した――

「さて、おじさんもそろそろ覚悟決めなきゃなあ……」

　今度は睡人がどこからともなくリボルバー型拳銃を取り出して構える。

「ああ、これね、エアガンだから。本物の銃じゃないよ」

　ああ、そうですか。そうですよね。ここ日本ですしね。横で見ていた他の子たちの目が一瞬点になってましたよ全く。ああビックリした。

「大抵の奴は２～３発で眠りこけるが、コイツはどうだろうね。」

　睡人は得意の逃げ足で距離を保ちつつ、エアガンを射撃。
　巨大イソギンチャクがスクラップの山に埋もれて動けなくなった所へ全弾叩きこんで、ようやくろっこん『夢眠弾』で眠らせる事に成功したのだった。