軟体これくしょん｜リアクション

軟体これくしょん

●イソギンチャクへの道

「巨大生物……あれならフツウを壊せれるかねぇ？　ならば……アレ飼おう」

　巨大イソギンチャクを目前にその口元に不敵な含み笑いを浮かべた『俗物根性は世界を巣食う』骨削瓢は打ち上げ花火を放ちながらダッシュを始めた。
　花火は巨大イソギンチャクの体表にぶつかり、僅かな火傷を負わせるに過ぎないが、瓢はひるまず愛用のスコップを片手に突撃を敢行する。

「いきなり、出てきたよ、こいつら。まぁ、いつもの神魂暴走って奴だな。
　タコとイカとイソギンチャク……イソギンチャク？？
　え？　タコイカときたらマンボウじゃないのかよ！！　まぁ、邪魔だから倒すだけだ！！」

　一方、懐からヌンチャクを取り出すと軽く一閃し、巨大イソギンチャクを見据える『エンター・ザ・ドラゴン』李飛龍。

「俺のろっこんは集中すれば集中するほど強化される奴だ。まずは『１分』集中させてもらう」

　飛龍は隙の無い構えを取ると、目を閉じて集中を始めた。
　飛龍のろっこん『ドラゴニックパワー』は集中する事で身体能力を高める事ができるのだ。

「巨大怪獣退治？　面白そうじゃない……全力で捻り潰してあげる」

　尾鎌蛇那伊は気合いと共に一瞬で着ていた服をキャスト・オフ！
　
　そこには一糸まとわぬ蛇那伊の裸体が！　……という事は無く、ゴアンシンクダサイ、ちゃんと下には海パンをはいていました。らっかみ！倫理委員会は無事に機能しているようです。良かったですね。
　それにしても『蛇那伊の裸体』ってなんかゴロがいいですね。え？　そうでもない？

（閑話休題）

「はぁぁぁーっ……」

　続けて呼吸を整え、静かに気を練っていき、練り上げた気を全身に巡らせて身体能力の底上げを行う。
　そして海岸の漁師小屋から借りて来た銛を手にイカへ攻撃を開始する。

「麻痺触手があるのに、無策で接近戦は行わないわよ」

　裂帛の勢いで投射された銛が、一直線に飛んで巨大イソギンチャクの身体に刺さる。
　同時にそのヌメヌメとした体表が裂け、気味の悪い色の体液が辺りに撒き散らす……

　ギョエエエエッッ！！

　巨大イソギンチャクは苦痛とも怒りともつかない絶叫を上げ、ずるずるとその巨体を振わせながらもれいび達に襲いかかる。

　紙一重。一点を見ずに全体を見る。視界に耳を済ませて風切り音を聞いて全ての触手の動きを見切り、最小限の身体捌きでかわしていく。蛇那伊は右へ左へと襲い来る触手をかわしながら、巨大イソギンチャクを浜から道路へと誘導して行く。
　触れれば麻痺させられてアウトのチキンレース。しかし、ひそかに蛇那伊はスリルを楽しむ余裕を持っていた。

　とはいえ、攻撃を警戒するあまりに防戦一方の蛇那伊だったが、ようやく集中を終えた飛龍が助太刀に飛びこんで来た。

「イソギンチャクね。たしか、動物なのにほとんど動けねぇはず……どうやって動いてるんだよ」

　確かに言うとおりである。疑問はもっともだが、その問いに答えられるものはここにはいない。

「また、訳も分からない影響が出てきたって事は、倒すしかないぜ！」

　迫りくる触手の攻撃に気を付けながら、硬い身体にヌンチャクをぶちかます。
　確かな手ごたえが得られるまで、二度、三度と攻撃を繰り返す飛龍。
　蛇那伊も負けじと抜き手で巨大イソギンチャクの身体を激しく抉る！