軟体これくしょん｜リアクション

軟体これくしょん

●野生の速度

「何だコレ、映画の撮影かねえ……？」

　ねむるの父親、『昼行灯』日暮睡人は店番を抜け出し、海岸沿いをドライブしていたのだが、偶然この騒ぎに巻き込まれ、普段のダメ親父ぶりを返上するべく、巨大イソギンチャク狩りを頑張る事にした。
　
「ねむると歳の近い子達が頑張ってるんだ。おじさんもたまには本気、出さなきゃね」

　とりあえず近くにいた『猫鳴館自治会員な子泣きジジイ』初島優を車に乗せる。
　優には何やら策があるらしい。

「……そういえば海水浴場の近くに立体駐車場あったねー。
　よし、立体駐車場にイソギンチャクを誘導するようお願いします。俺はそこに罠を仕掛けます」

　睡人は優を立体駐車場に降ろすと、車で海鮮市場に向かい、磯の香りのする物を後部座席に乗せ、窓を開けたまま今度は浜辺の蛇那伊たちを助けに向かう。

「にしても、あとで匂い取れるかなこれ。おじさんそこが不安なんだけど」

　浜に戻ると蛇那伊や飛龍、瓢が巨大イソギンチャク相手に徒手格闘で戦いを続けていた。睡人は磯の匂いで注意を引きつつ車で突撃アタック。砂煙をあげて車を滑らせた後、彼らを助手席に誘う。

「コイツを駐車場まで誘導するんだ。よけりゃ乗ってくかい？　……車んなかめっさ臭いけど」

　急いで蛇那伊と飛龍、瓢は車に飛び乗り、同時に睡人はアクセルを踏み込む。
　幸か不幸か巨大イソギンチャクの速度はそれほど速くなく、追いつかれる心配はない様だ。
　だが、振り切ってしまっても誘導ができないので、睡人はつかず離れずの位置を維持して優の待つ立体駐車場へと向かった。