サマー！部活動のお時間です！～文化部編～｜リアクション

サマー！部活動のお時間です！～文化部編～

　午前の練習が終わり、昼食の時間となる。
　家庭科室に集まった皆に甲が言った。
「えー、オッホン。みんな、聞いてくれ。たこ焼き屋である私の姉上から小型のたこ焼き器、及び材料一式を拝借してきた」
　思わぬサプライズに歓声が上がる。
「今日の食事としてみんなに振る舞おうと思うのだが、どうだろうか？」
「たこ焼き作るの、手伝うよ！」
　夏朝が声を上げ、割烹着エプロン姿の衣夢も言う。
「寮で一人部屋、前は別荘で一人暮らしだったから、これでも料理はそれなりに出来るわ。
　たこ焼きくらいなら、まぁ大丈夫よ」
　皆でわいわいと、たこ焼き作りが始まった。
　ラッセルは気になっていたことを衣夢に聞いてみる。
「なあ、栖来のその格好、衣装か？　なんか役作りとか？」
「そんなの決まってるわ……そう、趣味よ！」
　キリッ、とした表情で堂々と趣味を公言する衣夢にラッセルがずっこける。　
「趣味かよ！　お、焼けてるぞ！」　
　ひっくり返そうとして夏朝はたこ焼きを崩してしまった。
「ころころひっくり返すの、意外とコツがいるなぁ……」

　なんとか無事たこ焼きは焼きあがった。
「うまそう～♪」
　すぐにも食べようとするラッセルを制して、普段は無口な甲がヒーローになりきって言う。
「折角の合宿、ただ食べるだけと言うのも味気ない。急な無茶振りで恐縮だが……役者として表現力を磨く為にもここはひとつ、それぞれ一言ずつグルメレポート風のコメントでもしてみるというのは如何だろう？」
「えーっ、何だよソレ？」
「面白そうだね。じゃ言いだしっぺから」
　由貴奈が振ると、
「それではまずは私から……」
　甲はもぐもぐとたこ焼きを食べて、言う。
「生地とタコ、ソースに鰹節、青海苔。五つの個性が完全に調和する事で生み出される味のハーモニー、これは例えるならば……熱き五人の魂が一つの正義となる、救急戦隊サイレンジャー！……といったところだろうか……」
　思い切ってヒーローらしく決めてみたのだが、少々コメントが特殊過ぎたか、皆微妙な顔をしている。
「難しいわね。私は衣装係なんでコメントは短く。すごく美味しい！　これぞ演劇部の伝統料理！」
　衣夢が言うと、
「それぞれの材料がそれぞれの個性を生かしてひとつのたこ焼きを作り上げる。これはまさに舞台の醍醐味。そして皆で一つの釜の飯ならぬ一つの鉄板のたこ焼きを食べる。サイレンジャーじゃないけど、心が一つになる気がする」
　夏朝が綺麗にまとめ。
「えー、このとろけるような舌ざわり、鼻をくすぐるソースの香り！　鰹節が踊り、青海苔がフォローする！　このコンビネーションは最強です！　みたいな？」
　ラッセルが乗る。
「なんかスポーツ実況みたいだねえ。あたしは演技はパスね。はふはふ、美味い」
「えー、先輩もやってくださいよー」　
「そういう演技へたくそだから……うん、生地もソースも美味いよこれ、さすが専門店の味」
　相変わらず眠そうだが、しっかりたこ焼きを味わう由貴奈だった。