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雨よ、どうか
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秋ノ宮 こまち
は買い物袋を抱え、雨の粒を見るともなしに見ながらぼんやりと困っていた。傘は無いし、星ヶ丘の寮まではだいぶと距離がある。とっさに駆け込んだ軒先も、まばたきの間にすら強まる雨には頼りない。こまちが見渡すかぎりでは、この中をもう一歩踏み出すだけの見返りが得られるような場所も見当たらなかった。
「……どうしよう」
幸い、この気温の中で持て余すようなものは買っていない。それがこまちの足をすこし鈍らせた。
斑鳩 遙
が雨粒に視界を遮られながらもこまちの姿を見留めることが出来たのは、そのせいかもしれない。
ぱし、ぱし、ぱしゃん。次々と出来る水たまりに足元を構う気すら起きなくて、遙はアパートへの道のりを走っていた。ここまで来ればもうすぐだ、そんな思いが左足を大きな水たまりにざぶりと突っ込ませる。さすがに、靴の中までも水をかぶってしまったあの感触に閉口して一瞬足を止めるが、その時ふと顔を上げた瞬間、遙の目に見覚えのある顔が留まった。
「こまち君か?」
「あ、斑鳩……さん?」
軒先がかろうじて守っていたこまちの視界に、雨の壁からぐいと訪れた遙。濡れ鼠になったその姿は、いつかこまちが傘を差し出した時の記憶をきれいに呼び起こした。
「ひどい雨だ。君も降られたクチか」
「はい、急だったので……」
軒先に入り、シャツの裾を搾る遙。この間と一緒ですねとこまちがくすり笑えば、遙も薄い笑みで応えた。
「俺のアパートはすぐそこなんだが」
「あら」
「雨宿りしていかないか、止みそうにないしな」
借りは、返すためのもの。遙が指差した先には、白い壁のアパートがある。
「ええと……」
「安心してくれ、俺にだって守備範囲くらいあるよ」
「……では、お言葉に甘えて」
育ちのよさを写しとったようなこまちの瞳が、わずかな不安に揺れるのを遙は見逃さなかった。これだけ歳の差があれば当然だ。それでも、冗談めかした誘い文句が通じるくらいには気を許してくれているのだろう。少し待つようにと言い残し、遙は二本の傘を取りにひとり、雨の中を再び走る。
◆
「お邪魔します。……今度は前と逆になってしまいましたね」
「何もないが、適当に寛いでくれ。珈琲? 紅茶?」
「あ……では、珈琲を」
こまちが遙から手渡されたタオルは、柔軟剤ではなく洗剤の匂いがした。さらりとした手触りのそれでこまちは髪を丁寧に拭き、次に買い物袋と鞄の水滴を取る。割合すぐに軒先に駆け込めたおかげで靴下までは濡れていなかったからだろうか、遙の部屋に上がるのにさほどの躊躇いをこまちは持たなかった。
「すごい音だな」
「ええ、しばらくは止みそうにありませんね」
男一人暮らしの殺風景な部屋、外の風景は白い雨とその音。電気ケトルが湯を沸かす音、インスタントの珈琲を溶かすのに、かちゃ、とスプーンとカップがぶつかり合う音。それらが止めば、この部屋の空気はふたりを雨降る世界から隔てるようにしんと静まり返る。
「いただきます。……あの傘、使ってくださってもよかったのに」
「曲がりなりにも借り物だ」
軽い風体の割に、律儀なひと。ちょうど今ひとくち啜った、ミルクと砂糖をほんの少し入れた珈琲のよう。そんな印象に目を細めたこまちは、ふと顔を上げる。このひとのことを何も知らない、そして同じくらい、自分のことを何も知られていないことに気づいて。自己紹介をしようと、こまちがすっと息を吸ったタイミングで、遙も同じように珈琲カップを置く。
「あの」
「俺」
ことばとことばがそっとぶつかり合い、優しく立ち止まる奇妙な静けさに、ふたりはしばし距離を測り合って黙った。
「……お先に、どうぞ」
「ああ」
それから少しの間、譲りあうほどのことでもない、他愛無い話が続く。お互いの学業や仕事のこと、こまちの別荘のこと、この部屋には割と久しぶりに帰ってきたこと、など。時折、歳の差のせいかちぐはぐなやりとりも無いではなかったが、途切れないことばたちはお互いがお互いに強く興味を持っていることを示していた。
「……」
「……静かだな」
それでも、静けさに呑まれるようにふたりは言葉を失い視線を彷徨わせる。雨の壁は不思議に音を吸い、まるでこの部屋だけ時間が止まってしまったようだ。この雨降る世界のなか、どこかでそれぞれの時計を止めてしまったふたりがこうしてまた出会ったのは、果たして純粋な偶然なのだろうか。
あの雨の日は、こまちのかけたオルゴールの音があった。遙は立ち上がり、自分でも殺風景だと揶揄するこの部屋にあまり似つかわしくない高級そうなCDコンポに向かう。何枚かそばに立てかけられたCDケースのうち迷わず一枚を手に取り、その中身を再生にかけた。
「最期の作品だ」
「……ご友人の、ですか?」
こまちの問いかけに、ああ、と遙は小さく頷いた。
大粒の雨粒がぱたり……と落ちるような、シンプルな二つの和音のイントロ。やがてそれは今日の雨のように、息を呑む速さで音階を駆け上がっては落ちてゆくアルペジオへ、そして雷が地を貫くような激しい主題、快速のアジテートへと変化してゆく。時には指がもつれてしまいそうな速さ、だが音のひとつひとつは丁寧で美しい。張り詰めて切れる寸前の絹糸束のような、ひりひりとした緊張感と、それを紡ぐ奏者のいのちの輝き。物言わぬ円盤に閉じ込められたそれからも、感情の発露が生々しく伝わってくる。
こまちはその音にただ圧倒され、何も言えなかった。まるで心の水面にざわりと波を立てられたような感覚。その波がどんなものか、的確に表現する言葉を今のこまちは持っていない。だが、ひとつ言える、いや、言わなければいけないことがある。
「こんな音を鳴らす人が、どうして……?」
「そう、思ってくれるか」
遙は冷めたカップを手に取り、中身をぐいと飲み干した。
何故、自ら命を断ってしまったのか。そう思う者がここにも居る、こまちが口にした事実が遙の背中をそっと押す。こんなことを言っても戸惑うだけかもしれない、だけど……。
「俺たちが追っている謎は……似ているというだけでは済まされない何かがある気がする。こまち君、俺は君の謎を追う手助けがしたい……俺の共犯になってくれないか」
こまちは母の形見、オルゴールのルーツを、遙は親友の死にまつわる謎を追っている。一見すれば何の因果も無いように思えるふたりの故人を、雨が二度も結びつけた。そこに働いているものを、縁と呼ぶことは出来ないだろうか。
それぞれがそれぞれの謎を追うとき。寝子島も狭いようで広い、何かを調べるにしてもひとりでは無理なことが多かろう。だがちがう視点を持ったふたりなら、あるいは。
突然の申し出に、こまちはさっきとは違う意味でまた言葉を失っていた。何故自分にという純粋な疑問、遙の役に立てるかという不安、そして。共犯という、間柄。友人でも、恋人でもない。どこか後ろ暗く、あやうくて甘い香りを含んだ名称に、こまちは戸惑う。
「母のことを知ろうとするのは、悪いことですか……?」
「隠されたものを暴こうという意味では、そうかもしれない」
ふと、曲が途切れる瞬間。こまちの脳裏に、母のオルゴールの音がよみがえる。櫛歯が最初の音をぴん……とはじく時の、清冽な一瞬。言葉に出来ないこの記憶の再生も、縁と呼べるなら。
「やらせてください……私に出来ることがあるのなら」
雲の切れ間からわずかに光が射すのを、東向きの窓が捉えた。
雨は、いつの間にか上がっていたらしい。
「……ひとつ、聞かせてくれないか」
携帯電話の番号とメールアドレスを交換し、遙はこまちが貸した傘を手渡しながら問いかける。時任彼方、謎の自殺を遂げた遙の親友。こまちは彼の演奏を、どう感じたのかと。
こまちは少しの間目を伏せ、言葉に出来ない感覚を素直に述べてみせる。
「もし、心に水面があるのなら……それを静かに波立たされたような、ふしぎな気持ちになりました。……巧く言えなくてごめんなさい、自分でもこの感覚がよく分からないんです」
「いや……」
ふたつの死の謎は、残された者のこころにもうひとつずつ、謎を置いていったのかもしれない。だが、雨は上がろうとしている。止まった時も、いつかは進み始めるだろう。こまちは小走りに、寮ではなく別荘への道をゆく。焦りにも似た思いが、こまちを支配していた。
「(……残さなくちゃ、この気持ちを)」
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シナリオデータ
担当ゲームマスター
瀬島
シナリオタイプ(らっポ)
ブロンズシナリオ(100)
グループ参加
2人まで
シナリオジャンル
日常
定員
10人
参加キャラクター数
11人
シナリオスケジュール
シナリオガイド公開日
2014年05月10日
参加申し込みの期限
2014年05月17日 11時00分
アクション投稿の期限
2014年05月17日 11時00分
参加キャラクター一覧
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