臨海学校でおおはしゃぎ？　遠泳と地引網のお話｜リアクション

臨海学校でおおはしゃぎ？　遠泳と地引網のお話

　正也が何度も寝返りを打つ。その様子をちらりと見、微笑ましいと思いながらも武道は何処からとも無く小さな手帳を取り出した。それはタイムなどを書き込んでいる手帳で、武道にとってかなり大切な物であった。
（あんまり、真面目な所は見せたくないな）
　普段はテンションが高く、道化師のように笑わせようと明るく振舞っているが、心のどこかでは真面目に過ごしたかった。
　記録を付けていくうちに、武道は少し気を落としていた。確かに、スランプから抜け出すカギをあの遠泳で掴めた気がする。けれども……。少し溜め息を吐いていると、不意にこんな声がした！
「もーちーづーきぃ……ちょーっぷ！」
「！？　ちょっともっちーアタックって！」
　いきなりごろごろ転がってくる望月。武道はすぐいつものテンションに戻り、うらぁ！　と足で身体を押さえて腕拉十文字をかまそうとする。けれども良く見ると望月はむにゃむにゃ眠っているようだ。
「空元気も元気だけど、無茶すんなよ～」
　そんな言葉に心を見抜かれているようで少しどきっ、とするけれど、望月はそのままむにゃむにゃと夢の中。武道はくすり、と笑って「よしっ、まだ寝てて☆」と布団に転がす。そうしながらも……小さく笑った。
「あまり遅くまでおきてないで、寝たほうがいい」
　煉が、ふすまを開けてそういった。どうやら、飲み物を買いに行ったらしくスポーツ飲料のペットボトルが２つ握られている。その1本を武道に押し付けると、煉は「おやすみ」と眠ってしまった。
＜ブドー、焦ってる？　ちょっと元気なかったかも＞
　ふと、正也のふきだしにもぽこっ、とそんな言葉が出て苦笑する。武道は３人を見て、ちょっとだけ胸のしこりが無くなったような気がした。
　普段弱みを見せないようにしている武道だが、気心の知れた煉、正也、望月にはどこか弱った所を見せる事が出来ていた。彼らも何気ない所で其々の形で武道の心を元気付けているのかもしれない。
（ありがとう、みんな……）

　タカシは布団の中で目を醒ました。同じ部屋になった先輩が、なにやら悩んでいるのは、ほんの少し感じとっていた。けれども、自分が動かなくても仲の良い先輩たちがいる。だから、あの先輩はきっと大丈夫。そんなふうに思って再び目を閉ざした。

　３泊４日の臨海学校、３日目の夜はこうして更けていく。先生方は見回りをしつつも無事に終りそうだと話し合い、安堵の息を吐いていた。

おまけ
　４日目の朝。誰も起きていないほどの早朝。旅鴉月詠は1人絵を仕上げていた。本当は他の部屋に突撃しても面白いかと思ったが、廊下に出た時点で早朝ランニングに行こうとした高野有紀に遭遇したのでやめておいた。
（……ホント、楽しかったな）
　臨海学校を振り返り、月詠は1人微笑む。そして、お茶を飲みながら色鉛筆をスケッチブックに走らせるのであった。

　目を醒ました八神修は、何故かご機嫌だった。というのも、夢の中であおいと海辺のデートをしたらしく、あおいと目が合えば少し頬を赤くした。一方、あまり良く眠れなかった桐野正也は欠伸を噛み殺しながら首を回す。
「ん？　どーした？」
　傍らの宇佐見望月がちょっと不思議そうに首を傾げていたので声を掛けると、彼は眠い目をこすりつつ、
「いや……なんでか真央ちゃんと手を繋いで浜辺歩いてる夢みた」
　との事だった。この後本人にあって顔を真っ赤にした。

朝食を終えた後、使った部屋の清掃をしてから一行はバスに乗って寝子島へと戻った。生徒達は旅の疲れを見せない笑顔で解散し、先生たちもほっとした様子で彼らを見送った。

　三崎楚良は後日、地引網の様子を生き生きとした絵に仕上げた。写真はそのままを写すものの、絵は心を写し取るからだそうな。心から楽しんで描いたそれは学校に飾られ、多くの人の目をひきつけたという。
　そして、月詠の描いた絵もまた好評であった。地引網や遠泳、宿泊施設での出来事が並び、思い出話のきっかけを作るのだった。

（終）

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あとがき

担当マスター：菊華伴
ファンレターはマスターページから！

菊華です。
お待たせいたしました。臨海学校編、お届けいたします。

皆さんのアクションにより、楽しい結果となりました。
遠泳はやった事が無かったのでちょっと描写で苦労しましたが楽しんでいただけると幸いです。
そして、初の３０人以上担当でちょっと緊張しておりますが、皆様らしさが出ていれば嬉しい事です。

さて……。
今回はまさに青春！なアクションを戴きまして、ありがとうございます。
楽しませていただきました。みなさん、素敵ですっ！！

特に一寸法師の君だよ！！

その他、遠泳に掛ける人もあり、地引網のみに集中する人ありで個性たっぷりアクションでした。
……あ、タコはあの後ちゃんと宿泊施設の方が美味しく調理してくれましたのでご安心を。

当初は林間学校と臨海学校、どっちも担当するとは思わず……。
それでも、夏を彩る事が出来たのならば御の字です。

それでは。縁がありましたらよろしくおねがいします。

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