星ヶ丘教会のお茶会｜リアクション

星ヶ丘教会のお茶会

「ローズヒップティーは『若返りの秘薬』なんて言われてるんですよ。美肌効果も期待できますから女の子には嬉しいお茶ですよね」
「……詳しいのね」
　桧垣の解説に雨宮がじっと手元のグラス――そう、今現在騒動を巻き起こしているローズヒップティーだ――を見つめて呟く。
「ばんり先輩は【カリスマメイド】ですからね」
　我が事のように御陵が胸を張れば、桧垣が照れをごまかす様にストローに口をつけた。
「……この年齢で恋人いないっておかしいかな？」
　こくりとアイスティーを嚥下して、ストローから口を離せば、例に漏れず桧垣の口からは恋の話が飛び出した。
「！？」
　急な話題に雨宮が目を見張る。
「なんと……先輩こんなに美人さんなのに少しびっくりです……！」
　同じく目を見張った御陵だが、彼女もアイスティーを飲んでいた。つまり、雨宮とは別の意味で目を見開いている。
「高校生の頃からメイド喫茶のお手伝いやってたから、あまり男の人と普通に接したことないの……」
「でもゆっくり素敵な方と出会うのもいいと思います。先輩とっても素敵なので、きっと恋すると相手の方はイチコロですよー！」
　少々親父臭いが、桧垣を熱く励ます御陵と手元のグラスを交互に見て、雨宮はそっと自分のグラスを遠ざけた。
（……ウサギに……きっとこのアイスティーもなのね）
「はるさんは恋とかしてるのかしら？」
　すでに神魂の影響下にある二人は違和感を感じないようで、恋バナが盛り上がっていく。
「私ですか……！んん、恋と言いますか、最近よくとあるお友達のことを考えてますね……色々お話ししたいなーとか」
「どんな人なの？」
「あ、その方笑顔も素敵な方で、ってう、うあああああ……！」
　ぼんっ、と音がでるのでは、というほど勢い良く赤くなった御陵が両手で顔を隠す。
「……いたい」
　ぺちんっ、と良い音がした。
「少し落ち着いたら？」　
　雨宮が水の入ったグラスを御陵に渡す。
「うう、ありがとうございますー」
「ふふっ、私も少し落ち着こうかしら」
　偶然だったが、桧垣が手に取ったのは彼女お気に入りのアールグレイ。雨宮がグラスを遠ざけていたおかげで、取りやすかったそれを選んだのだろう。
「……ふぅ……あら？」
「んん？　あれ？」
　ぱちぱちと不思議そうに瞬く二人をじっと見て、雨宮が深く息をついた。
「大丈夫、みたいね……」

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