厳正な抽選の結果、貴方様がご当選されました。｜リアクション

厳正な抽選の結果、貴方様がご当選されました。

●お食事も恥じらって

　適当にあしらうつもりが、思った以上に長い立ち話をする羽目になった。
　その謝罪をするためにも、望月神無は日月透に向かい直って、柳のように頭を垂れる。
　その際、思わずため息も溢れてしまった。
「聞いてのとおりっす、俺、望月財閥の令嬢なんっすよ」
　自分で自分のことを『令嬢』と言うなんて、我ながらなんて皮肉だろうと神無は自嘲した。
　それから、隠すつもりはなかったんだけど、言う必要はないと思って黙ってたんだよな……なんて言い訳じみた言葉までこぼれそうになって、神無は慌てて口をつぐんだ。
　謝罪を終えて顔を上げるも、神無は透の顔を見るのが、怖かった。
　怖いという感情を自覚して、
（って、なんで怖いんだ？）
　と疑問が鎌首をもたげ、神無は思い直して透の顔を窺った。
「そうだったんですか」
　透はいつもとなんの変化も見られない。穏やかな、言い換えればのんびりとした笑顔を浮かべている。
「神無さんは神無さんですから」
　なんでもない風に、タラシ込むような発言をする。
（ほんと、いつも通りだな）
　彼のそんな言動にすこしばかり慣れてきた、ように思う。
「私は神無さんと一緒に過ごせて嬉しいですよ」
「あ、ありがとう……ございます」
　それでも僅かに言葉を詰まらせた。
　ただ、今は、言葉が詰まったというよりは、胸のつかえが取れて、安堵したという意味の方が大きかったのだけれど。
　そしてまた、神無は自分自身の感情に戸惑う。
（ん？　なんでほっとしたんだ）
　透がいつも通りの反応をしてくれた。
　それが嬉しい、ならわかる。けれど、ほっとする、というのはいったいどういう意味なのだろう。
　自分で自分自身のことがわからない、という気味の悪さを洗い流そうと、神無はジュースのグラスをぐっと煽った。
　意味もなく、透からは視線を逸らして。
　甘ったるい、すこしベタつく液体が口内をすすぎ、喉にたまっている不快感を流し、胃に落ちていく。
　腹がぐるぐると冷たくなる感覚――言葉通りの意味で――の後に、すぅっと果実の香りが鼻を抜けていった。
「……美味しい」
　さすがというべきだろう。
　ジュースひとつ取っても、ファミリーレストランとは比べ物にならなかった。
　と、視線を透から外すと、自然と周りの様子に目が行った。
（カップルばっかりじゃないですかー）
　よく考えればすぐにわかることだ。なんたって、ペアご招待券だったのだから。
　急に恥ずかしいような気分になって――また、あれ？　と首を傾げる神無であった。

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