はじめてのおさぼり？｜リアクション

はじめてのおさぼり？

（あれ？　ののこちゃん達だ、どこ行くんだろう？）
　絵の具で汚してしまった制服を、クリーニング店に受け取りに行った帰り道、小山内海ははしゃいだ様子で道を行く、ののこ達を見かけた。
　特に買うものがあるわけじゃないけれど、テスト休みだから思い切って羽を伸ばそうと、当てもなくシーサイドタウンをぶらぶら歩き、雰囲気を楽しんでいた矢先だ。

　気付いて貰おうにも、海は幼い頃に病気で声を失っている。
　筆談用に小さなスケッチブックと、ペンを持ち回しているものの、やっぱり相手の目線に入る必要があった。
　てってと走って回り込み、頭の上で大きくスケッチブックを振り回すと、にゃーくんが「にゃー」と鳴いて円が声を上げた。
「あ、海ちゃんだ、やっほー！」
　気付いてもらって安堵した表情の友人は、やっぱりかわいらしいと思った。

『みんな　どこへいくの？』
　海のペンが、スケッチブックの上を走る。
「どこって、ええっとぉー……」
　何故か言いよどむ瑠奈に、小首を傾げた。

「小山内さん、ちょっといいかな……」
　湧いた疑問にペンを走らせようとしたら、夏朝からナイショ話を打ち明けられた。

（あ、おさぼりごっこ……ののこちゃんは今日が休みなの、知らないんだ？）
　そういえば昨日カフェテリアで、そんな事を小耳に挟んだ気がした。
「本当の事を知ったら、ののこちゃん達が落ち込んじゃうから……」
（まぁ、もともと休みなら、そう言うふうに勘違いしてても、別に問題は無い……のかな？）
　それに、聞いていると何だか面白そうだ。

『わたしも　ついていって　いい？』
　スケッチブックに意志を表示すると、「勿論だよ」と快い返事。
「私達、これから海岸に行こうと思うんです」
　あおいと手を繋いだ綾花が、嬉しそうに微笑む。
「そう言えば海ちゃんは、私服でどこに行くつもりだったの？」
　ののこの無邪気な問い掛けに、海は少し考えて、さっき受け取ってきた制服を見せた。
「わ、制服だ！　もしかして」
　目を輝かせるののこに、海はちょっと誇らしげに胸をそらせて見せた。
『せいふくだと　さぼりだとわかってしまうから　とちゅうできがえたんだよ』
「すっごぉーい！！　あたしも、私服持って来れば良かったぁー」
　感心しきりの、ののこと瑠奈。
「さ、話し込んでると誰かに見つかっちゃうわよ。そろそろ移動しましょ」
「はーい」
　紫蓮に促され、また新しい仲間を加えて、ののこ一行は再び歩き始めた。

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