春先迷路｜リアクション

春先迷路

「迷った……のかしら」
　
　そんなはずはないと思いながらも黒依アリーセは小首を傾げる。
　寝子島育ちではないものの、それなりに馴染んで来たと自負しているし、ましてや毎日通いなれた学校へ行く道で迷うなんて、まずありえないのだ。

　……でも、現に迷ったとしか思えないわよね。

　迷わないなんて、ただの自惚れであると自覚するしか無さそうだ。
　ならばさくさくと現地を検索かけてこの状況を打開すべき。

　アリーセは溜息混じりにスマホを開き、地図アプリをチェックする。

　……表示されない？
　
　もう一度チェックしてみる。
　けれど地図はエラーで圏外を示している。
　ビルの中ではないし、これといって電波を阻害するようなものが特にない屋外なのにだ。

　……迷うはずのない場所で、表示されるはずのものが表示されない。
　ならこれは『フツウ』の出来事ね……。

　色々と察したアリーセは、とりあえず焦ることなく散歩にいそしんでみることにした。