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はたらくよ
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つづく課題で、講師は「自分の経験を、将来の仕事と結びつけて話してみましょう」と言った。
ペアになった
数寄屋橋 井乃梨(すきやばし・いのり)
は、千里が医学部と聞いて目を丸くする。
「驚いた? ここまで絵の話しかしなかったからな」
「じゃあ、絵は息抜き?」
「息抜きだけで済ませる気はないし手も抜かない。抜くとすりゃ睡眠時間だ」
「それ一番抜いちゃいけないやつでは?」
「ありがたいご意見に感謝、心に留めておくよ」
「絶対、受け入れる気のないアンサーだよね」
言葉こそ厳しいが井乃梨の声は楽しげだ。視線も千里から離れなかった。
「それで、どんな絵を描いてるの」
「日常の模写とか……あとホラーが多いかな。見る?」
「見せて。そこまで言われたら気になる」
千里がねこったーを開くあいだ、井乃梨は資料を伏せて待った。
「医者になる勉強もして、絵も描いてるんだ」
「まあな」
「……カッコいいよね、そこまで好きなものがあるのは」
井乃梨はスマホを受け取った。モノクロのペン画が中心。大胆で緻密な構図に、スクロールする手はいちいち止まった。
「上手すぎない!? 私、絵のこと全然わからないけど、プロかと思った」
「褒めすぎだよ」
「このホラーなやつ。リアリティあって怖いのに、次の絵も見たくなるね」
サンキュ、と千里は鼻の頭をかいた。ネットで賞賛をもらうのとはちがって、ダイレクトだからこその面映ゆさがある。
「医学やってて、人体の知識があるからかも」
「知識と熱意が海道君の武器ってわけだ」
井乃梨に言われて、そうかもしれないと千里は思う。医学漫画なんて、ありかもしれない。
「可愛い女の子も描けるよ。こういうのとか」
「上手っ。このモデルの子に嫉妬するよ」
「残念、それは友達のカノジョだ」
「実在すんの?」
「まあ、半分以上想像で補ったけどな。オレとも友達だけど、あんまジロジロ見るのもって思って」
「海道君なら、私のこと描くのも許してあげよう」
「……ジロジロ見ていいのか?」
「やらしい!」
堅物かと思った井乃梨は、話してみれば案外楽しい。もっとも、その楽しさを引き出したのが自分であることまでは、千里自身も気づいていない。
なんてやっているうちに、「時間です」と壇上から声がかかった。
「ヤベっ、オレの話ばっかになっちまった。数寄屋橋さんの話、全然聞けてねえ」
「なるほど」
「『なるほど』とは?」
「また会う口実ができたな、と」
「え、オレそんなナンパなやつに見える?」
「ちがう。『口実ができた』と思ったのは私のほう」
井乃梨は自分のスマートフォン、NYAINのQRコード画面を千里に差し出したのである。
「また見せてよ、絵」
「おう、また見てくれ」
「本当に私のこと描いたりする?」
「許可を得てからな。あと、ジロジロは見ないよ」
コネづくりや就職活動の足がかりにすべく来たはずが、同世代の動きはてんでわからなかった。まあ、新しい知り合いはできた。今日のセミナーの後半では本題にも励むとしよう。できれば。
──なにせ。
井乃梨と別れ、席を移動しつつ考える。ラッセルの姿が見えたが声まではかけず、たがいに片手を上げるだけにとどめる。
なにせ挫折して立ち直ったオレたちは……何度転んでも立ち上がるって決めてっから。
少なくとも、オレはね。
──『はたらくよ』 了
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あとがき
担当マスター:
桂木京介
ファンレターはマスターページから!
最後までお読みいただきありがとうございました! 桂木京介です。
最初は『労働者N』なんてタイトルで考えていたこのシナリオですが、それだとやたらと重苦しいし、「働けー」と始終命じられているような気もしてきたので、『仕事って、しんどいこともあるけど楽しいこともあるよ』『悩むところかもしれないけれど、希望は失ってほしくない』というメッセージをこめて改題しています。
いただいたアクションはいずれも、明るいばかりではなく、日常の苦労や、未来への悩みや不安とも向き合う内容だったと思います。
本作では、簡単に正解を出すよりも、誰かと話したことで少し気持ちが楽になったり、考えるヒントが見えたりする時間として描くようにしました。
みなさんがこの先どんな道を進んでいくのか、私も楽しみにしています。
それではまた会いましょう。
次回シナリオでもお待ちしております。そしてお手紙も、超お待ちしております。
桂木京介でした!
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シナリオデータ
担当ゲームマスター
桂木京介
シナリオタイプ(らっポ)
シルバーシナリオ(150)
グループ参加
2人まで
シナリオジャンル
日常
学校生活
定員
10人
参加キャラクター数
10人
シナリオスケジュール
シナリオガイド公開日
2026年09月14日
参加申し込みの期限
2026年09月21日 11時00分
アクション投稿の期限
2026年09月21日 11時00分
参加キャラクター一覧
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