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真遠は、とりあえずオタ話ができそうなまみ子と揚羽を指名した。
これだけ濃厚な面々を相手にできそうなのはこの二人だけだろう──との読みだったが、果たして大正解だった。
好きなロボットアニメについてニョン太郎とまみ子は熱っぽく話しこみ、最初はガチガチだった駒田も、酒の勢いも借りてどんどん饒舌になってくる。
「声優キャストが絶妙な作品っていえば、やっぱ『00(ダブルゼロ)』がねー、神配役だったとまみちゃん思うの」
「いやでも女性キャラが……長官の声がシャーリーさんだったのは」
ニョン太郎がこだわりを見せると、これはまみ子にとっても共感を呼んだらしい。
「わかる! シャーリーちゃんならもっと若い役でよかった。『戦術的撤退ッ』って小屋敷さんあたりに言ってほしかった~」
ぎょっとした様子で駒田が言う。
「ま、まみ子殿、小屋敷嬢をご存じで!?」
「トーゼンでしょ。引退しちゃったとき、まみちゃんマジ泣きしそうになったんだから~」
「しかれど、小屋敷嬢が現役で活躍していたころは、まみ子殿まだ幼少期、いや、この世にお生まれではなかったのでは?」
「ヤダー、駒田さんったら。まみちゃんって、そんなに幼く見える~?」
漏れ聞こえる話題に、うん、完璧なまでの『まみ子』ぶりだとうなってしまう真遠である。
素のまみ子、いや、姫木じゅんは、口調から物腰からうんとやさぐれていて喫煙者で、実年齢だってもうじき三十だと知ったら、駒田先輩どう思うだろう……いや、むしろ「ギャップ萌えに候」とか言い出すかな。
一方、揚羽とあかりも、自作PCの話題で意気投合したようだ。
「グラボはともかくSSDがですねえ、最近値上がりが激しくて」
むーん、と腕組みする揚羽は、素の
烏丸 一紗(からすま・かずさ)
とあまり差がない。一紗は、わざわざ接客用のキャラを作らずともやっていける少数派のキャバ嬢なのである。
「わかります。私も増設ためらいましたから」
まだいくらか緊張はある様子だが、あかりもリラックスしつつあるようだ。興に乗って話す。
「マルチディスプレイで原稿をてがけつつ大量の資料もひろげて、サイドで戦略ゲームも回して、ついでに配信も裏で流しっぱなしにしてるんで、グラボもメモリも正直カツカツです。VRAMもいまのままじゃもう厳しいんですよね、レイトレとかONにすると一気に落ちるし」
「おや、峰村様、原稿とは? ひょっとしてイラストでもたしなんでおいでで?」
「いえ、私、絵は全然です……まああの、小説とか、ちょっとだけ」
「おいおい、『ちょっと』なんてもんじゃないだろ」真遠は笑ってしまった。「峰村はプロの作家なんだ」
なんと、と揚羽は声を上げた。
「ご筆名、お聞かせ願ってよろしいですか」
「……九重シキ、っていって。マイナーなんで、知らなくても全然……」
「九重シキィ!?」
揚羽は、座ったまま飛び上がりそうになった。実際、二センチくらい浮いたかもしれない。
「私ったらなんとはしたない。大きな声を出してしまって」
慌てて取り繕おうとするが時すでに遅し。まみ子も食いついてきた。
「九重シキ、シキ先生! まさかお目にかかれるなんてっ!」
取り乱しているがそれでも「まみちゃん感激っ」と言い足して、キャラ設定を守っているあたりがプロである。
まみ子も揚羽も九重シキの読者だったそうだ。なにより、このたびアニメ化された『アステリズムは百合の夢を見る』は、「次にアニメ化されるラノベはこれ!」とふたりで以前から盛り上がっていたそうである。
にわかに色めきだったが彼女らも、他の同席者を放っておいてシキ先生だけをちやほやしたりはしない。むしろ駒田もニョン太郎もまきこんで、テーブル全体で『アステ』の話題に花を咲かせた。
「拙者もSF者として、スペオペ要素に大いにたぎってこざる」
「僕は心理描写が好きだねー。きめ細かくて、さすが峰村さんって感じ」
「恥ずかしながらわたくし、同性ながら美しすぎるシーザ様に、キュン死しておることを告白いたしますっ」
といった風にワイワイ褒められっぱなしで、気恥ずかしいのかあかりは真っ赤になっている。
「若先生は衣澄(いずみ)派? シーザ派?」
まみ子に話を振られて、真遠は言葉に詰まった。アルコールが回ってきたせいか白状してしまう。
「実は、原作買ってるんだけど、まだ読んでない……」
嘘ではない。既刊は全部買っている。ただ、めくってすらいないのも事実だった。
話の筋だって一応は、わかる。
天文部に所属する女子高生が、宇宙のかなたで激戦を繰り広げる二大勢力による星間戦争に巻き込まれる物語で、主人公と、もう一方の勢力の艦隊提督である王女との恋と政戦両略のバトルを描いた本格百合スぺオペとのことだ──これくらいの情報は、ネットニュースあたりで回収していた。
「すまん。このところ忙しくてな。アニメも全話録画済みだし、まとまった時間ができたら一気読みするよ」
頭を下げたが、あかりはまったく傷ついた様子もなく「は、恥ずかしいので読まなくても……」と首を振った。
そうすると残りメンバーが、作品としての読みどころや面白さのポイントを、また饒舌に話してくれた。真遠は大げさなくらい、そうかそうかとうなずいてみせているが内心はちがった。
忙しくて読めていないというのは言い訳だ。
本当は、ページをめくる勇気がなかったからだ。
みんなが口を揃えて絶賛するのだから、本当に面白いのだろう。わかっているからこそ、読めない。
峰村さん、いや、九重シキは、大学を出ても就職せず、いろんなバイトを渡り歩きながら書きつづけ、八年前にプロデビューしてついにブレイクを果たした。初志貫徹で作家になったんだ。本物の作家に。
俺だって似た夢を抱いたことがある。『久慈たから』って筆名でラノベ作家を目指した。でも、才能がないのにはやばやと気づいて、結局、親の事務所を継ぐことになった。
それでも未練たらしく、いまだにPBWマスターとして小説家のまねごとをしている。けどこの世界でだって不人気だ。判定が『皆殺しの久慈』と罵倒されるほど厳しすぎるからだろうな。いやだって、冒険にしろ戦争にしろ、そんなに甘いもんじゃないだろ?
甘いもんじゃない──。
ほんの一瞬、猛烈な感情が噴き上がった。
「でもな九重シキは、本当は男なんだぞ!」
ぶちまけてやればいい。
そうすれば、みんな驚くだろう。
「峰村あかりの本名は
峰村 識
だ。『あきら』って読む。マタ大入学当初はそうだった。だがずっと自分の体に違和感を感じていて、名前の読みかたを『あかり』に変え、女性として生きる道を選んだ。それを知っているから、女性が苦手な駒田さんも、ニョン太郎も、峰村さん相手なら緊張しない。逆に俺は、意識してしまって『峰村』って呼び捨てにできなくなった」
とも。
でも、そんなことしてなんになる?
シキは偉い。立派だ。自分の在り方と向き合いながら、努力して夢を実現した。その事実はゆらがない。
──畜生。そんな卑怯な暴露をするほど、俺はみじめな存在になりたくない!
だから真遠は葛藤を表情には出さない。もちろん、口に出すことだってしない。ただ笑顔で、「おいおいこれから読む人にネタバレはすんなよー」とぼやいてみせるのがせいぜいだった。
そんな自分の横顔を、識が黙って見つめていることに真遠は気づかない。
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担当ゲームマスター
桂木京介
シナリオタイプ(らっポ)
ゴールドシナリオ(200)
グループ参加
2人まで
シナリオジャンル
オールジャンル
定員
5人
参加キャラクター数
5人
シナリオスケジュール
シナリオガイド公開日
2026年08月30日
参加申し込みの期限
2026年09月06日 11時00分
アクション投稿の期限
2026年09月06日 11時00分
参加キャラクター一覧
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