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[TOS]レメディ
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●ずっと、青い
ガーナックΩ(オメガ)
は海を見ていた。
見ていた、というよりただ波打ち際にいたというべきだろうか。
はじめ爪先あたりまでだった波が、足首を洗いはじめていた。
目的も、任務も、現在のオメガにはない。量産型の再生作業は終わった。Y.E.S.S.I.R.が完全に破壊されたもの以外は元通りになったから。次の指令を待つだけの状態だ。待つ場所など、どこでも構わない。足が、気づけば海辺へ向かっていたというだけのことだ。
波が寄せ、返す。
寄せ、返す。
規則的な動きだった。演算するまでもない単純なリズムである。オメガは、茫漠とした目を波に向けつづけた。
頭の奥で声がした。
「あなたは、治すために生まれるのよ」
誰の声かわからない。記憶の底に沈んでいる、消えかけた灯のような声だった。
オメガは首を振った。
あたしは「次世代型」ガーナック、人間の脳細胞を用いたバイオコンピュータを搭載されている。
いいかえれば、意図的に記憶と感情を脳細胞に残したままつくられたということ。
目的はおそらく、この世界に適応するため。しかし同時に、排除すべきはずだった人間を全滅させられないという矛盾を抱え持っている──。
寄せてくる波を蹴った。水しぶきが跳ねる。
意味のない行動だった。それはわかっている。わかっていて、もう一度蹴った。
跳ねた海水が顔を濡らした。前髪から滴となって落ちる。
自分が何をしているのか説明できない。苛立っている。それはわかる。だが何に対して苛立っているのか。
任務がないことに?
あの声に?
それとも、ヴァロラ峡谷での出来事に?
あのときあたしは引き金を引いた。なのに、あの小柄なガーナックは死ななかった。
自身の〈再生〉が意図せず流れ込んだ、そういう結論には達していた。だがそれだけではない気がした。何かがあの瞬間に起きた。あの少年が言った言葉が、まだ頭のどこかに引っかかっている。
ありがとう。
感謝されるなど想定になかった。ただの障害物としか思っていなかった相手に。
なぜあの言葉が、こんなにも——。
オメガは蒼空に目を向けた。水平線まで青く澄んでいる。廃墟や汚染地域、戦場ばかり歩いたせいで、地球がこれほど美しかったことを忘れていた。ドクターによる世界改造の副産物だ。大量破壊と殺戮が、この星に安らぎを取りもどしつつある。皮肉なことだと思う。
遠くから声が聞こえた。
声は複数だ。このあたりに居住コロニーはないはずだが。警戒する様子がないところから推察するに、非戦闘員だろうか。
オメガは波に目を向けたまま、気配だけで人数を把握した。
三人。うちひとりが砂浜を駆けている。足音が軽い。
声が届いた。
「うわー、きれいな海なのです!」
その場を離れることも考えた。しかしオメガは、とどまることを選んだ。
ターヤ・トイヴァネン
は走りながら、ふと足を止めた。
少し離れた波打ち際に人影がある。真紅の外套が潮風にゆれているのが見えた。
「あれって……?」
ターヤがふり返った先は英二だ。
大黒(おぐろ) ミオ
ではなく。
英二は戸惑いながらミオを見た。
ミオは前を向いたまま、何も言わなかった。
「近づいてみよう」
英二の声は、少し低くなっている。
人影は動かなかった。背を向けたまま微動だにしない。黒髪。白い肌。すらりとした長身。
「やっぱり」
と短く告げてターヤは口を閉ざした。
どさりと砂に落ちたものがあった。ミオの義手だった。すでにミオの左腕の肘から先は、鋭利な刃物に変わっている。
英二が、一歩前に出た。
「オメガさん」
呼びかけた。声が震えないように、少し息を整えてから。
黒い瞳が英二を映した。感情の色はない。鏡のようだった。ヴァロラ峡谷で向き合った目だ。
「……どうして、攻撃しないの」オメガが問う。
「戦う理由がないから」
英二は答えた。
「きみが敵なのはわかってる。でも、僕は……僕らは、いまここできみと戦うつもりはない」
オメガの回答を待たず、英二は言った。
「きれいだね、海」
オメガの目が、わずかに動いた。
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シナリオデータ
担当ゲームマスター
桂木京介
前回シナリオ
[TOS] 狂気日食
シナリオタイプ(らっポ)
シルバーシナリオ(150)
グループ参加
2人まで
シナリオジャンル
SF・ファンタジー
定員
10人
参加キャラクター数
10人
シナリオスケジュール
シナリオガイド公開日
2026年07月08日
参加申し込みの期限
2026年07月15日 11時00分
アクション投稿の期限
2026年07月15日 11時00分
参加キャラクター一覧
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