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[TOS]レメディ
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●lacrimae
空が広い。
遮るものが何もないせいだ。かつて都市だった場所だが、建築物はことごとく倒壊していたから。
梓 楓
は歩いていた。
楓の後にたくさんの足音がつづいている。ヴァロラ峡谷の虐殺を生き残った住民たちだ。
過半数は老人、女、子どもで、戦える者はほとんどおらず、傷を負っている者も少なくない。荷車を引いて、ときにその荷車に傷病者を乗せて、楓の背中を追うように歩いている。
頼らないで、と思う。
私はリーダーじゃない。
それでも彼らはついてくる。楓が足を止めれば、背後の足音も止まる。楓が歩き出せば、また動き出す。
彼らを振り切れない自分を、楓は認めざるを得なかった。あのなかには、虐殺の直前、楓を新世界機構に差し出して生き延びようとした者もいるだろう。流言に惑わされ、同士討ちに走った者もいるかもしれない。恐怖が人を変える。それはわかっている。わかっていても、あまりにも醜い。
だからといって、死ねばいいとは言えなかった。
ある夜、難民の集団は野生動物の群れに囲まれた。野犬化した犬だ。首輪を巻いている個体もちらほらあった。ゴールデンレトリバーなど、品種改良された犬種が混じっていることも痛々しい。いずれも、飢えでぎらぎらした視線を向けてきた。
殞脈〈ダンス・マカブル〉を使い、楓は先頭の一頭の急所を一撃で仕留めた。群れは散った。住民たちが「ありがとう」と言ったが、楓は答えなかった。
別の日には、無法者の集団に行く手をふさがれた。
十数人。銃を持つ者もいた。秩序の崩壊した世界では、ガーナックよりも人間のほうが始末に負えないことがある。
楓は先頭の男の鼻骨を砕き、次の男の膝を折り、三人目が銃を構える前に手首ごと使用不能にした。それだけで残りは逃げていった。住民たちはまた「ありがとう」と言った。楓はまた、答えなかった。
やがてどうにか落ち着けそうな土地を見つけ、仮のキャンプを築いた。
焚き火を弱め、枕元にショートブレードを置いて楓は眠った。
夢を見た。
母の夢だった。
忘れていたはずだった。戦いの日々に摩滅し、いつしか記憶の海に溶けてしまったはずだった。なのに夢の中の母は笑っていた。そればかりか活き活きとした表情の変化を見せた。楓がわがままを言って困惑させたときの顔、怒った顔、悲しんだ顔……そのすべてが、無秩序に押し寄せてきた。
目を覚ましたとき、楓は自身が泣いていることに気づいた。
なぜ。
一生分の涙は、とっくに流しきったはずだった。
なのに。
涙を拭いきれないまま楓は空を見上げた。夜明け前の空は、まだ暗い。
肌が粟立つ。
目が覚めたのは夢のせいではなかった。
気配が、あった。
楓の全身が一瞬で戦闘態勢に入る。涙の残りをまばたきで払い、目を細める。
見えない。でも闇の中に、何かがいる。
いや——誰かが。
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シナリオデータ
担当ゲームマスター
桂木京介
前回シナリオ
[TOS] 狂気日食
シナリオタイプ(らっポ)
シルバーシナリオ(150)
グループ参加
2人まで
シナリオジャンル
SF・ファンタジー
定員
10人
参加キャラクター数
10人
シナリオスケジュール
シナリオガイド公開日
2026年07月08日
参加申し込みの期限
2026年07月15日 11時00分
アクション投稿の期限
2026年07月15日 11時00分
参加キャラクター一覧
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